「たりないふたり」がなぜドラマ化? 『だが、情熱はある』に見る“芸人ブーム”の流れ
オードリーの若林正恭と南海キャンディーズの山里亮太の半生を描いたドラマ『だが、情熱はある』が、4月9日より日本テレビ系でスタートする。
本作のドラマ化が発表されたのは、若林と水卜麻美アナがMCを務める『午前0時の森』(日本テレビ系)に、山里がスペシャルゲストとして登場した1月31日のこと。この2人といえば、2012年に活動をスタートさせた漫才ユニット「たりないふたり」としても知られている。
なぜ、今このタイミングでドラマ化されるのか、ドラマはどのような内容になるのか、改めて綴りたい。
昨今のお笑いブームには、芸人たちの人生も含まれている
2000年代初頭から2010年代を振り返ると『エンタの神様』(日本テレビ系)や『笑いの金メダル』(テレビ朝日系)、『ウンナン極限ネタバトル! ザ・イロモネア 笑わせたら100万円』(TBS系)などのネタ見せ番組がGP帯でレギュラー放送されていた。さらに今も続く賞レース『M-1グランプリ』(テレビ朝日)が始まったのは2001年、『キングオブコント』(TBS系)が始まったのは2008年。
今振り返っても、疑う余地がないほどにお笑いブームだったことが見て取れる。
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そして近年、再びお笑いブームが起きている。しかし、個人的にはお笑いブームである以上に“芸人ブーム”なのではないかと、感じるのも事実。
それはステージの上で漫才やコントを披露する姿だけでなく、そこに立つまでの彼らの人生や素顔を描くコンテンツが増え、好まれているからだ。
例えば、先述した『M-1グランプリ』2017年大会の王者・とろサーモンに密着したドキュメンタリー『芸人人生 泥に咲く花』が翌年2018年に放送。さらに2018年大会以降は、ファイナリストを中心に大会の裏側にフォーカスを当てた番組『M-1グランプリ アナザーストーリー』が恒例化。2021年に歴代最年長王者となった錦鯉に関しては、その半生を描いたドラマ『泳げ!ニシキゴイ』が、他局の情報番組『ZIP!』(日本テレビ系)にて約2カ月間放送されたことでも話題になった。
それに加え、2020年大会からはYouTube公式チャンネルに1回戦から準々決勝までのネタが投稿されるように。応援している芸人の動向を同チャンネル、そして芸人たち本人のSNSでチェックし、彼らとともに緊張したり、一喜一憂したりするファンも多く見かける。
これらの動きから『M-1グランプリ』は日本一の漫才師を決める賞レースでありながら、漫才師たちの人生や生き様を投影するコンテンツとなっていった。そこに対する賛否はあるものの、派生コンテンツが充実しているのは実際にウケているがゆえだろう。
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また、これまで“おもしろくてなんぼ”のお笑いの世界で、人がフォーカスされるようになったのは何も『M-1グランプリ』だけではない。
例えば、オードリーの冠番組『あちこちオードリー』(テレビ東京系)。同番組は、春日俊彰が大将を務める料理店を舞台に、常連客の若林正恭とゲストの有名人が本音でトークするという内容。パンサー向井慧が仕事でうまくいかなかったことを書き綴った反省ノートを公開した回や、ロンドンブーツ1号2号の田村淳が番組MCという立ち回りに対する葛藤を吐露した回など、芸人たちの煌びやかではない一面を映した回は話題を集め、「ギャラクシー賞テレビ部門」にも選出された。
これらの動向から近年のお笑いブームはおもしろさだけでなく、飾らない素の部分を垣間見ることも込みでブームとなっているように感じるのだ。