坂本龍一さんの訃報に、エドガー・ライト、ダンカン・ジョーンズら映画人からも追悼の声 

 音楽家・坂本龍一さんが3月28日に亡くなった。71歳だった。

 「イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)」での活動以降、作曲家、音楽プロデューサー、俳優、ピアニストなど多岐にわたって世界に影響を与え続けてきた坂本龍一さん。

 世界中の人々にその名が大きく知れ渡るようになったのが、1983年に公開された大島渚監督作『戦場のメリークリスマス』への出演。坂本さんは陸軍大尉ヨノイとして、デヴィッド・ボウイ演じるジャック・セリアズに惑わされていく人物を、演技を超えた奇妙とも言える生々しさで表現していた。坂本さんは同作で音楽も手がけ、主題曲は不朽の名作として、今もなお世界中で聴かれ続けている。

 同作で共演した北野武は、「ただただショックで残念で仕方がなく言葉もありません。大島渚監督が亡くなってデビッド・ボウイが亡くなって、坂本龍一さんが亡くなって仲間がみんないなくなってしまい、『戦場のメリークリスマス』は俺だけになってしまいました」とコメントを綴っている。(※1)

 さらに、1988年には音楽監督して参加したベルナルド・ベルトルッチ監督作『ラスト・エンペラー』(1987年)で第60回アカデミー賞作曲賞を受賞。その後もベルトルッチ監督とは『シェルタリング・スカイ』(1990年)、『リトル・ブッダ』(1993年)でタッグを組み、近年もアンドリュー・レヴィタス監督作『MINAMATA―ミナマタ―』(2020年)、コゴナダ監督作『アフター・ヤン』(2021年)といった外国映画の音楽を手がけるなど精力的に活動していた。今後、坂本さんが音楽を手がけた作品として、是枝裕和監督作『怪物』が6月2日に、蔦哲一朗監督作『黒の牛』が2023年秋に公開される予定だ。『怪物』で坂本さんとタッグを組んだ是枝監督は情報発表時に、「長年の念願が叶ってようやくコラボレーションが実現しました。撮影中も編集中もホテルの部屋で坂本さんの音楽をかけながら作業をしていたので正直お引き受け頂けなかったら途方に暮れていたと思います。歓喜、しています」とコメントを寄せていた。(※2)

 1月13日に日本公開されたドキュメンタリー映画『モリコーネ 映画が恋した音楽家』でも、坂本さんの名前はたびたび登場している。アカデミー賞からは長く“無視”され続けたエンニオ・モリコーネ。3度目のアカデミー賞作曲賞ノミネートとなった『アンタッチャブル』でも受賞することができず(この年の受賞作品が『ラスト・エンペラー』)、“坂本さんに負けた”と語り、ベルトルッチに声をかけてもらえなかったことも悔やんでいたそうだ。

 坂本さんの訃報は世界各国で報じられており、エドガー・ライト、バリー・ジェンキンス、ダンカン・ジョーンズら海外の映画人からも哀悼コメントが寄せられている。

 エドガー・ライトは、「大きな損失だ。何という人生とキャリアだろう」とその功績に敬意を表し、バリー・ジェンキンスは「坂本龍一。唯一無二の存在」と称えている。

 さらに、坂本さんが『戦場のメリークリスマス』で共演したデヴィッド・ボウイの息子で、映画監督として『月に囚われた男』『ミッション:8ミニッツ』などを手がけるダンカン・ジョーンズは、「この素晴らしいアーティストの家族と友人、すべての方に愛を贈ります。彼が手がけた心のこもった作品の一部になれたことに感謝します」とコメントを寄せている。

 また、坂本龍一さんが音楽監修を務めた映画館、109シネマズプレミアム新宿が4月14日に開業する。同映画館では、音楽制作を担当した映画やライブ映像をオールナイトで上映する『Ryuichi Sakamoto Premium Collection All Night』が、4月21日、22日の2日間にわたって開催される予定だ。

参照

※1. https://takeshi-kitano.jp/#profile
※2. https://realsound.jp/movie/2023/01/post-1227883.html

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