庵野秀明は“仮面ライダー”をいかに再構築したのか TV版と石ノ森章太郎の漫画版への深い愛 

 さて、先に『シン・仮面ライダー』を観て、後から漫画版を読んだ人なら「あっ」と驚く場面があったかと思う。それが、漫画版の物語の中盤にあたる「13人の仮面ライダーの巻」のエンディングだ。

 本郷猛はショッカーが開発した11人の仮面ライダーに惨殺されてしまう。そこに現れた洗脳の解けた一文字隼人が仮面ライダー2号を名乗り、ショッカーライダーたちを全滅させるのだが、科学者たちの手によっても本郷の肉体は蘇らなかった。その代わり、本郷の「心」(脳)は研究所のカプセルの中で生かされ、一文字の「心」とつながることになる。

「いくぞ猛 これからは おれたちはもうひとりぼっちじゃない! いつもふたりだ。――ふたりで『ショッカー』と戦おう……!」

 こう語りながら、仮面ライダー2号はサイクロン号で海沿いの道を疾走する。『シン・仮面ライダー』のエンディングとまったく同じである。ふたりが「隼人」「猛」と下の名前を呼び捨てにしあうところも同じ。庵野監督は漫画版の名場面を『シン・仮面ライダー』に活かそうと考えたのだろう。漫画版ではこの後、本郷は人造人間として復活してダブルライダーが揃い踏みするのだが、はたして……。

 多くの人たちが親しんだTV版に愛情を注ぎ、より深く物語を描いた漫画版をベースにしつつ、庵野監督によって現代的なエンターテインメントとして再構築された作品。それが『シン・仮面ライダー』ということなのだろう。

■公開情報
『シン・仮面ライダー』
全国公開中
出演:池松壮亮、浜辺美波、柄本佑、竹野内豊、斎藤工、大森南朋、長澤まさみ、西野七瀬、松坂桃李、森山直太朗、塚本晋也、手塚とおる、松尾スズキほか
原作:石ノ森章太郎
脚本・監督:庵野秀明
配給:東映
©石森プロ・東映/2023「シン・仮面ライダー」製作委員会
公式サイト:https://shin-kamen-rider.jp
公式Twitter:https://twitter.com/Shin_KR

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