『夕暮れに、手をつなぐ』最終回で交わった空豆と音の運命 永瀬廉の「好きだ!」が響く
『夕暮れに、手をつなぐ』(TBS系)の放送開始前に公開されたポスタービジュアルが表していたのは「2人が一緒に過ごす、最後の1日」であり、脚本の北川悦吏子自身が書き下ろしたキャッチコピーは「とっくに恋に落ちていた」だった。
最終回を終えた今なら、その意味がよく分かる。ポスタービジュアルが示すのは最終回前となる第9話で、互いを思い合いながらもその気持ちを伝えられずに3月の線香花火を雪平邸の庭で楽しむ空豆(広瀬すず)と音(永瀬廉)。そして、キャッチコピーは2人が運命の相手だったことを確信する最終回とその運命が動き出した出会いの瞬間、第1話の冒頭のシーンを指している。
交差点ですれ違いざまにぶつかりAirPodsを落とす空豆と音。2人が聴いていたのはヨルシカ「春泥棒」。互いが拾ったAirPodsは入れ替わっており、2人の距離が離れていくと音楽も途切れ途切れになる。そんな奇跡のような出会いから空豆と音の物語は始まっていた。この時から2人は、とっくに恋に落ちていたのだ。
しかし、恋に落ちていながらも「好き」の一言が言えずに空豆と音はゆっくりと遠ざかっていってしまう。音の俯瞰的なナレーションで提示される別れと雪平邸の縁側で過ごす時間が刹那的であるということ。振り返れば、この『夕暮れに、手をつなぐ』には「運命」というワードと「距離」がキーポイントにあった。AirPods然り、塔子(松雪泰子)然り、音然り。空豆にとって「遠くの人を楽しませる人は近くにいる人を悲しませる」というセリフは、トラウマとして呪いのように自身を縛り付けていたが、結果的に最終回ではそこから解き放たれることとなる。
「11時にあの、二人が初めて出逢った交差点で待ってる」
待ち合わせ場所に現れない音。既読のつかないLINE。ここまでは空豆と音のこれまでどおりのすれ違いと言えるが、交差点で再び運命が動き出す。空豆のマフラー、第1話を彷彿
とさせる空豆と音のシチュエーション、そして、この交差点で出会った時から運命の相手だと信じてやまなかったということ。「好きだった。好きだ!」という溢れ出る音の叫びは、まさに「とっくに恋に落ちていた」というキャッチコピーを表している。
思いが通じ合った空豆と音の距離はゼロになる。美しいキスシーンだけでなく、空豆が音に子供のようにしがみつきながら「もう離れんで。離れんで」とギュッと抱きしめる仕草が彼女の心情を強く表していた。