『100万回 言えばよかった』“白いねこ”に込められた願い 直木と悠依が過ごした奇跡の1日

 白いねこに出会い、やっと愛の意味を知ったねこ。100万回生き返ることよりも、ずっと一緒にいたいと思える人と出会えて命を終える幸せ。両親からの愛を受けられなかった直木にとって、悠依と過ごした日々はそんなねこの気持ちと重なる。悠依の笑顔を見ることで、自分の人生全部に意味があったのだと思えた。それは、どれだけ長く生きたかよりも、ずっと大事なこと。

 絵本では、白いねこが先に亡くなって、ねこは100万回泣いたあとに静かに動かなくなる。そのラストを目にした譲は、少し不安になったのだろう。だから直木と一緒に海辺へ行きたいと言う悠依が、もしかして直木が消えたとき後を追うように……と。でも、悠依にとっても「直木は白いねこ」だった。悠依と直木の中で白いねこは死の象徴ではなく、生きる意味を教えてくれた存在。何より、私たちは知っている。悠依が絵本を読んで自分が白いねこだったら、ねこに「100万回泣いたあとは元気にピンピン生きていってほしい」と言い放ち、悠依のそういうところが直木は好きだとしみじみ思っていたことを。

 直木と悠依の間に起きた出来事は悲劇だった。けれど、2人で過ごした時間は決して悲恋ではない。未来を奪われた上に、そんな悲しい結末にはさせない。もしかしたら、それが最も強い思い残しだったのかもしれない。「悠依、愛してる」「愛してる」「愛してる」……何度言っても伝えきれない。でも、届けられる限り、100万回でも、1000万回でも、この気持ちを言葉にしておきたい。たとえ姿が消えても、その声が届かなくなっても、耳に残って聞こえてくるくらいに。

 もしかしたら空から聞こえた口笛は、空耳だったかもしれない。でも、それはどちらでも構わない。そんな愛しい気持ちを抱えているうちは、常にその存在を感じながら生きているのだから。力強く、そして2人らしいラストを見終えて、ふと思った。最終話のサブタイトルは「今が奇跡のとき」。この「今」というのは、直木と悠依の最後の1日であるのと同時に、きっと私たちが生きる「今」この瞬間そのものなのだと。

 人はいつかその人生に幕を下ろす。でも、それがいつかは誰にもわからない。だから、振り返って初めて「あれが最後の時間だった」と思う。でも、今ならまだ間に合うのだ。「よかったね、こういう時間が持てて」という奇跡のような時間を過ごすことができる。

 そして大切な人たちに「うれしい」とか「おいしい」とか「大好きだよ」とか、思ったことをちゃんと言っておこう。「急にどうしたの?」なんて言われて、ちょっぴり照れくさいかもしれないけれど。でも、言ってもらって嬉しくない人なんていないのだから。

■配信情報
金曜ドラマ『100万回 言えばよかった』
TVer、Paraviにて配信中
出演:井上真央、佐藤健、シム・ウンギョン、板倉俊之(インパルス)、平岩紙、春風亭昇太、荒川良々、松山ケンイチ
脚本:安達奈緒子
プロデューサー:磯山晶、杉田彩佳
演出:金子文紀、山室大輔、古林淳太郎
編成:中西真央、吉藤芽衣
主題歌:マカロニえんぴつ「リンジュー・ラヴ」(TOY’S FACTORY)
製作:TBSスパークル、TBS
©︎TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/100ie_tbs/
公式Twitter:@hyakumankai_tbs
公式Instagram:hyakumankai_tbs

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