『ザ・グローリー』は単なる復讐劇で終わらない ソン・ヘギョらが紡ぐヒューマンドラマ
毒親に理想的な親……さまざまな親子関係が描かれる
復讐を完遂するため、冷静・気丈に振る舞ってきたドンウンだが、唯一感情を高ぶらせたのが、実母であるチョン・ミヒ(パク・チア)との再会だった。
高校生のドンウンを金のために見捨てた母親は、18年経っても何も変わっていなかった。重症のアルコール依存症で悪態をつく姿は見るに堪えず「親子の縁は簡単に切ることができない。どこまでも追いかけてやる!」と目を血走らせる母親に、ドンウンは絶望感を味わったことだろう。
ドンウン自身、母親のことを「最初の加害者」と言っていただけあって、母親に対してどのように復讐するのか注目していたが、酔って部屋に火を放つ母の姿を録画し、アルコール依存を治療する病院に強制的に入院させることに成功した。
「親子の縁は簡単に切ることができない」を逆手にとり「親子でなければできない」ことを利用して、ドンウンは母親から逃れることを選択したのだ。ドンウンと母、まれにみるひどい親子関係だった。
ヨンジンは、かつていじめでユン・ソヒ(イ・ソイ)をビルから突き落とし殺してしまった。その時に事実を隠蔽したのが母親、ホン・ヨンエ(ユン・ダギョン)だった。同級生のシン警察署長(イ・ヘヨン)を利用して、ことあるごとにヨンジンの尻ぬぐいをしてきた母親だったが、そのことをネタにヒョンナムの夫、イ・ソクジェ(リュ・ソンヒョン)から脅迫されることに。そしてソクジェを亡き者にしようと殺してしまう。
娘同様に殺人犯になってしまったヨンエが取った驚くべき行動は、自分の罪を軽くするために娘を売る……ということだった。そしてそのことを知ったヨンジンは、絶望的な気持ちを味わうことになる。表面上、仲良く見えたヨンジン親子だが、実際は自分勝手な母親から本当に愛されていなかったのだろう。
このような「毒親」がいる一方で、ヒョンナムは、DV夫から娘のソナ(チェ・スイン)を命がけで守った。ソナの幸せだけを願い、二度と会えないことを覚悟して留学させる。
またヨジョンの母親でチュ病院の院長、サンイム(キム・ジョンヨン)は、息子が愛する人のために何か違法なことをしようとしていることを知っても「捕まらないで」と息子の考えを受け入れる。そして心に傷を負った息子を救ってほしいと、ドンウンに頼みこむ。
そして何より印象的だったのは、ヨンジンの夫・ドヨンが取った行動だった。イェソルが実の娘ではないと知りながら、ヨンジンに「離婚してもイェソルは私の娘だ!」と断言した。学校で孤立していたイェソルを迎えに来て抱きしめたシーンに心が温かくなった人も多かっただろう。幼いイェソルを守ろうとするドヨンの常識的な行動が、この物語の救いになったことはいうまでもない。
娘を食い物にしたり、平気で裏切ったりする母親がいるかと思えば、自分の身を投げうってでも子を守り、そして血がつながっていなくても守ろうとする父がいた。「親子とは一体何だろう」という難しいテーマを考えさせられる物語となった。
ドンウンとヨジョンの未来は……?
自らの復讐劇を終えたドンウンは、またしてもヨジョンの前から姿を消し、自ら命を絶とうとする。それを止めたのがヨジョンの母親だった。夫をカン・ヨンチョン(イ・ムセン)に殺され、それによって息子であるヨジョンが心を病んでしまった。彼女もまた人の痛みが分かる人間だったのだ。
どんな思いでドンウンが18年間を過ごしてきたのかを知ったヨジョンの母は、ヨジョンを地獄から救ってほしいと頼みこむ。それをきっかけにドンウンは、ヨジョンのために「剣舞を踊る処刑人」になることを決意。いつの間にかドンウンもヨジョンを愛していたのだった。
ドンウンは、ヨジョンのために綿密な復讐計画を立てる。自分の時と同じように決して血で手を汚すことがないよう、確実な方法で……。そして再びヒョンナムに協力を求める。
ドンウンとヨジョンが最終的にどうやってカン・ヨンチョンを成敗したのか、はっきりと描かれることはなかった。しかし2人がお互いに「愛してる」と言い、カン・ヨンチョンが収監されている刑務所に入っていく姿を見て、未来が明るいものになったのだと信じたい気持ちでいっぱいになった。
■配信情報
『ザ・グローリー ~輝かしき復讐~』
Netflixにて全16話独占配信中
出演:ソン・ヘギョ、イ・ドヒョン、イム・ジヨン
演出:アン・ギルホ
脚本:キム・ウンスク