草彅剛主演『罠の戦争』が持つ重層的な構図 鷲津と鶴巻のバトルに竜崎、鷹野も参戦
重層的な構図のどこまでが罠で、どこからが真実なのか。複雑に絡みあった糸がおおもとで全部つながっているように、『罠の戦争』というドラマ自体、何重にも仕組まれた罠のような構造を持っている。戦争がエスカレートする一方、第8話で局面の転換を示すもっとも重要な出来事は、泰生が意識を取り戻したことだ。文哉が謝罪に訪れ、鴨井が自ら真相を明らかにしたことで、泰生の転落事件は当事者間で一つの決着を見ることになった。
隠ぺいを指示した鶴巻は鷲津の奥の手と鴨井の自白、竜崎の牽制によって痛手を受けた。鷲津の復讐の動機は希薄になり、やられる前にやる大義なき闘いに変わりつつある。泰生と言葉を交わす鷲津は柔らかい表情をしていたが、今度は鷲津の方が復讐される側になるのではないか。それを示唆するのが、文哉が話した事件の真相だ。社会的に弱い立場の人間が、自分より弱い人間に暴力をふるう。そこにあるのは逃げ場のない地獄だ。
復讐ドラマの終わりは復讐を達成した時で、相手の滅亡あるいは復讐者の諦観のいずれかに回収されることが多い。復讐の終わりは往々にして新たな復讐劇の始まりでもある。自分がダメージを与えてきた人間が今度は自分に復讐してくるのだ。人間の業そのもののような連鎖を止めるために何が必要なのか。第7話で事件の黒幕が明らかになり、第8話で被害者が回復した今、本作が残り3話で何を描くか興味が尽きない。余談だが、文哉から鴨井に向けた「守りたかった」が、「迷惑をかけた」でも「こうするしかなかった」のどちらでもなかったことに感動した。人生の暗い面を見てきた文哉が自省する心と世界への信頼を失わなかったところに、作者の人間観を見る思いがする。
■放送情報
『罠の戦争』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週月曜22:00〜放送
出演:草彅剛、井川遥、杉野遥亮、小野花梨、坂口涼太郎、白鳥晴都、小澤征悦、宮澤エマ、飯田基祐、本田博太郎、田口浩正、玉城裕規、高橋克典、片平なぎさ、岸部一徳ほか
脚本:後藤法子
演出:宝来忠昭
演出・プロデューサー:三宅喜重
プロデューサー:河西秀幸
音楽:菅野祐悟
主題歌:香取慎吾×SEVENTEEN「BETTING」(Warner Music Japan)
制作著作:カンテレ
©︎カンテレ
公式サイト:https://www.ktv.jp/wana/