貴司の歌集が重版出来! 『舞いあがれ!』が丁寧に描く、経過した時間と退職のプロセス

 舞(福原遥)と貴司(赤楚衛二)の幸せな結婚式、そして新婚生活がすでに描かれている『舞いあがれ!』(NHK総合)第21週は、前週に比べると急に時が進み、いろんなことが起きているように感じる。しかし、それでもその間にあった時間をなかったことにするのではなく、補完するように丁寧に描く点、そして誰かの退職について時間をかけてちゃんと描ききる点の良さに変わりはない。第98話では、IWAKURAを支えてきた笠巻(古舘寛治)が腰の怪我をきっかけに、辞職の意を示した。

 リストラを余儀なくされたIWAKURA編を思い出すと、あの頃から商品梱包のパート陣や職人の小森(吉井基師)など、“仕事を辞める人々”の気持ちを含め、特に思い入れを持って仕事をしている人の退職のプロセスを丁寧に描く姿勢が伝わっていた。メイン脚本家の桑原亮子が手がける本作には、どんな「仕事」に対しても、そういったリスペクトを感じさせられる。

 新婚生活が始まった舞と貴司のやりとり一つを取ってもそう。役所の人間が突然来社した件で残業をした舞とめぐみ(永作博美)にご飯を作ってあげた貴司。彼に料理のセンスがあることはこれまでも描かれてきたため、「美味しそう」と喜ぶ舞に思わず共感してしまう。しかし、そこでめぐみはしっかりと「でも、このままやったらあかんな。家事の分担決めよ」と言うのだ。

 貴司は「手が空いている人がやればいいんちゃう?」と言うが、この手が空いている人/気がついた人が家事をやればいい問題は本当に良くないので(結局、手が空かない/空けようとしない人、気がつけない人はずっとそのままになる)、そこに甘えず2人が「貴司くんにも自分の時間を作ってほしい」としっかり反対してくれたのも良い描写だった。歌人の貴司の方が、工場勤務の2人より時間があって“暇”、みたいな描き方ではない、どんな仕事も公平に描かれるのが『舞いあがれ!』の素敵なところである。

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