『どうする家康』松本潤の未熟さが際立った本證寺潜入 古川琴音演じる巫女の妖艶な魅力

『どうする家康』松本潤の未熟さが際立つ

 『どうする家康』(NHK総合)第7回「わしの家」。今川家との戦いを終え、元康(松本潤)は家康と名を改めた。国をまとめたいと願う家康だが、三河内の争いは絶えない。そんな中、家康は瀬名(有村架純)から民衆の間で一向宗が人気だと聞かされる。一向宗の寺々は家康の父が与えた「不入の権」を盾に年貢を納めていない。家康は一向宗の寺から年貢を取り上げることを思いつくが、酒井忠次(大森南朋)や石川数正(松重豊)、鳥居忠吉(イッセー尾形)らは反対する。家臣たちの反対を不服に思った家康は、榊原小平太(杉野遥亮)と本多忠勝(山田裕貴)を連れ、一向宗の寺に潜り込む。

 家康を演じる松本の、殿としての未熟さが感じられる表情が印象に残る回となった。

 物語冒頭、家康は織田信長(岡田准一)と木下藤吉郎(ムロツヨシ)から三河を平定せよと圧力をかけられた。家康は信長に対して相変わらず臆病だ。「(信長は)ものすっごう怖いんじゃぞ!」と口にする家康は、本多正信(松山ケンイチ)が思わず「かわいいのう」と言ってしまったように、まだまだ未熟だ。そんな家康だが、家康なりに国をまとめるための策を巡らす。一向宗の寺に年貢を納めさせることを思いついた家康の自信ありげな面持ちと、忠吉らからことごとく反対された際の怪訝な顔つきが面白い。また、なんだかんだ言っても、結局は家康も一向宗の寺に興味があったのか、松平家家臣・土屋長吉重治(田村健太郎)の前で、百姓のふりをした家康がすすで汚れた顔で満面の笑みを浮かべていたのもコミカルに映る。

 三河一向宗の一大拠点である本證寺に潜り込んだ家康は、その賑わいに圧倒される。本證寺の境内で神秘的に舞う巫女たちの一人、千代(古川琴音)が「空誓様がお見えになるよ!」と呼びかけると、人々が一斉に寺へ向かって駆けだしていく。巫女たちの舞と人々の様子に、家康はあっけに取られるばかりだった。

 殿としては未熟な家康だが、民衆のことを蔑ろにしているわけではないはずだ。空誓上人(市川右團次)の説法と、彼の言葉に耳を傾ける民衆の様子をじっと見つめる家康の厳しい表情が印象に残る。空誓は民が苦しむのは武士のせいだと説き、人々はその言葉に深く感銘を受けていた。人々が空誓に打ち明ける憂い事は、三河の厳しい現実だ。彼らの声は家康の心に鋭く突き刺さったに違いない。「現世の罪は現世限りじゃ!」という空誓の言葉に人々は歓声をあげる。人々の心をわしづかみにする空誓と、熱にうかされたようにいきいきと踊る老若男女の姿を、家康は浮かない顔つきで見つめていた。

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