『女神の教室』から学ぶ“線引き”という法律の曖昧さ 苦しみから立ち直ろうともがく南沙良

『女神の教室』から学ぶ法律の曖昧さ

 帰宅した真中(高橋文哉)の家の玄関先に吊るされていたハトの死骸のレプリカ。それがペットとして飼われていたものであれば「器物損壊罪」になるし、嫌がらせ目的で敷地内に入っていたとすれば「住居侵入罪」など、これがどんな罪に問えるのかを考える実務演習クラスのメンバー。そこで柊木(北川景子)が言うのは、「線引きが難しい」ということ。2月6日に放送された『女神の教室 〜リーガル青春白書〜』(フジテレビ系)第5話は、そうしたケースバイケースの“線引き”という法律の曖昧さがひとつのキーワードとなる。

 今回実務演習クラスで検討するテーマは「盗撮」。散歩のたびに付近の小学校に通う小学生たちの通学風景を撮影していた男性Xが、警察に通報され迷惑防止条例違反で現行犯逮捕される。そのXを弁護するならどうすればいいか。現行の刑法ではいわゆる“盗撮罪”なるものは存在せず、また各都道府県の迷惑防止条例において盗撮に定義されるのは、通常衣服などで覆われている下着あるいは身体を撮影する場合に限られており、衣服の上からの盗撮でも“ひわいな言動”に該当するとされた判例は存在するものの、まさしく“線引き”の難しい事案である。

 劇中でも触れられていた通り、昨今ではスマートフォンの普及とともに誰もが容易に撮影をできる環境になっていることは言うまでもなく、極めて軽い気持ちでの撮影、あるいは意図せずして盗撮になりうるケースも充分にありうる。そうしたなかで、いわゆる盗撮罪を新設するという動きはたしかにあり、近年進められている性犯罪関連の刑法改正案のひとつとして“撮影罪”が提案されたことが最近も報じられていた。もっとも、その処罰対象にあたる内容に今回のXのような事案が当てはまるわけではなく、肖像権の議論を含めてもまだまだ議論の余地があるわけで。

 そのように日々変わりつつある法律について柊木は「法律って生きてる」と表現する。それは照井(南沙良)が過去に受けた痴漢被害のフラッシュバックに苦しみ、そこから立ち直ろうともがく姿に寄り添うシーンでの言葉だ。痴漢もまた、迷惑防止条例違反で処理されるケースが多く、法律上は軽微なものとみられている現状は否定できない。「普通にならなきゃダメなんだよ。痴漢されないことが」という柊木の言葉は正論以外の何物でもなく、一方で単純に厳罰化すべきというのも必ずしも抑制につながるとは言い難いものがある。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる