松山ケンイチ&山田孝之、名コンビの予感! 『どうする家康』にもたらした“軽さと深み”

 『どうする家康』(NHK総合)第5回「瀬名奪還作戦」。松平元康(松本潤)は、駿府で囚われの身となっている瀬名(有村架純)と子どもたちが気がかりでならない。今川氏真(溝端淳平)と戦になる前に救う手だてを考えるが、家臣たちは一様に黙り込んでいる。そんな中、大久保忠世(小手伸也)が言いにくそうに口を開いた。家臣たちの中に一人、奇策を思いつく者がいるという。本多正信(松山ケンイチ)の名を聞くと、家臣たちは一斉に異を唱える。けれど元康は、家臣たちから「イカサマ師」と呼ばれる正信に興味を持ち、一縷の望みを託した。

 忠世が「本多正信」と口にした瞬間、家臣たちが勢いよく立ち上がり、口々に反対する場面は面白かった。「本多の恥!」「三河侍の恥!」との言われようから、相当信用ができない人物なのだとうかがえる。忠世に呼ばれ、元康のもとへやってきた正信だが、その風貌は確かに胡散臭い。正信は元康に臆することなく「やりようはあるでしょうな」と堂々としており、まずは銭をお預け願いたいと慣れた様子で口にする。鳥居元忠(音尾琢真)や平岩親吉(岡部大)からは「本性を表しましたぞ、ご一同!」「銭をぶったくるつもりじゃ!」と罵られるも、正信は平然としている。そんな正信もまた家臣たちを煩わしく思っているのか、正信の策を一蹴しようとする家臣たちをおちょくる場面があった。

 

「己は策がないくせに、策を考えたる者を、驕りじゃ、ゆすりじゃと、あ〜みっともない。あ〜みっともない」

 ふざけた態度で家臣たちを囃し立てる正信の姿は誰が見ても小憎らしい。

 家臣たち、特に、石川数正(松重豊)と酒井忠次(大森南朋)は最後まで渋っていたが、元康は正信の策に望みを託した。正信の策は、忍びである服部の一党を送り込み、瀬名と子どもたちを盗み出すというものだった。

 後に元康は、数正と忠次から「服部党はもうおりませぬ」と伝えられる。元康の父の代まで忍び働きをしていた服部半三はすでに亡く、その息子・服部半蔵(山田孝之)が名を継いでいるものの、形ばかりで今は百姓同然だという。

 松山演じる正信が胡散臭ければ、山田演じる半蔵は辛気臭い。正信は意気揚々と半蔵のもとへとやってきたが、肝心の半蔵は忍び働きに乗り気ではない。気乗りしない様子の半蔵に「なぜ?」「なぜじゃ」「忍びじゃろ?」「忍びでもあるんじゃろ?」と一歩も引かない正信もすごいが、半蔵もまた正信の執拗な問いかけに「俺は忍びではねえからじゃ」「服部家はれっきとした武家」「俺は忍びというやつらが嫌えじゃ」「忍びで武士の誉れなど得られるもんか」と一歩も引かない。軽々しい正信と武士としての誇りを重んじようとする半蔵のやりとりはとてもコミカルだ。正信は半蔵に何度断られようと銭を持たせる。半蔵は「やめろ!」と拒むのだが、正信は「武士としてな」「必要じゃろ?」「忍びもできるじゃろ」「武士としてな」と押しが強い。正信に押され、「うん?」と疑問を抱きながらも、受け取りざる得なくなった半蔵の困り顔に思わず笑ってしまう。

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