赤楚衛二は“言葉の旅人”である 『舞いあがれ!』で立ち上げた心優しき貴司像
舞の最初の恋の相手である航空学校時代の同期・柏木弘明(目黒蓮)の存在もここで一気に効いてきた。彼もまた貴司とは明らかに対照的なキャラクターだったからだ。多くの視聴者が理解しているとおり、貴司は完璧な人間ではない。周囲を笑わせる快活な性格の持ち主でなければ、ロジカルに言葉を扱うエリート然としたキャラクターでもない。旅をして自分の言葉を探し、短歌を詠むことで旅をする人間だ。そんな“言葉の旅人”である彼の魅力は、優しい言葉選びにあるのではない。その口調にこそある。つまり演じる赤楚がどのようにセリフを発するのかにかかっているのだ。心優しき貴司像は、脚本や演出だけでなく、やはり赤楚が演じることで完成したのである。春の陽光の中でまどろむ猫のような優しい声に癒されたのは筆者だけじゃないだろう。舞のみならず私たちにも寄り添ってくれるものなのだ。
これまでも“赤楚衛二=梅津貴司”はメインストーリーから切り離せない人物として舞の人生に関わってきたが、それらはいまピタリと重なり合った。これからの彼は本作のより核心(=テーマ)の部分に関わってくることになるだろう。先の公式ガイドでさらに赤楚は、「舞の支えになったり、背中を押してあげたり、心のオアシスになれたらいい」と語っている。登場人物を心から祝福したくなるのは、脚本の妙によるものだけではない。やはり重要なのは、誰が、何を考えて、どのように演じるのかだ。舞の人生は、もう大丈夫だろう。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:福原遥、横山裕、高橋克典、永作博美、赤楚衛二、山下美月、目黒蓮、長濱ねる、高杉真宙、山口智充、くわばたりえ、又吉直樹、吉谷彩子、鈴木浩介、高畑淳子ほか
作:桑原亮子、嶋田うれ葉、佃良太
音楽:富貴晴美
主題歌:back number 「アイラブユー」
制作統括:熊野律時、管原浩
プロデューサー:上杉忠嗣
演出:田中正、野田雄介、小谷高義、松木健祐ほか
主なロケ予定地:東大阪市、長崎県五島市、新上五島町ほか
写真提供=NHK