『カムカム』は時間の物語、『探偵ロマンス』は場所の物語 制作統括&演出に聞く

 NHK土曜ドラマ『探偵ロマンス』の放送がスタートした。多くの視聴者を熱狂させたNHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』のチームが再集結、キャストには濱田岳と草刈正雄を中心に名優たちが名を連ねているだけに、放送前から期待値は高かったが、その期待をさらに超えていったという視聴者も多いのではないだろうか。

 制作統括の櫻井賢は、「熱いスタッフと最高のキャストとの掛け算でできた作品」と本作に並々ならぬ情熱を注いだことを明かす。企画は本作の演出を務める大嶋慧介の思いからスタートしたという。

「本作の演出も務めている大嶋の『自分が本当に観たいドラマを作りたい』『ドラマを観ている間はいろんなことを忘れて夢中になれるものにしたい』という思いからスタートしました。今の時代に求められるドラマとはなんだろうとスタッフ陣が議論する中でたどり着いたのが、“江戸川乱歩”になる前の“平井太郎”さん。乱歩さんは自伝を書かれているのですが、これを読むと分かるのが若い頃は“駄目な人”だったということ。仕事は長続きしない、給料をもらってもすぐに使い切ってしまう、仕事に行くのが嫌になって居留守を使う……“文豪”という偉大な人ではなくて、実に人間臭い人物だったんです。その姿は今を生きる視聴者の方々、特に若い世代の方の思いと重なるのではないかと感じました。そんな人物が白井三郎という伝説的な探偵と出会い、少しずつ変化していく。乱歩さんの成長と、彼が見ていた時代を物語にできたら絶対に面白いドラマになるのではないかと。スタッフ陣の思いに、脚本の坪田文さんが見事に応えてくださり、素晴らしい物語に仕上がったと思います」(櫻井)

 そんなスタッフ陣の熱い思いを具現化してみせたのが、平井太郎役の濱田と白井三郎役の草刈だ。スタッフ陣にとっても、「この2人しかいない!」というキャスティングだったという。

「太郎はひねくれている人物ではあるのですが、決して嫌なヤツではないんです。その匙加減を表現できるのは濱田さんしかいないだろうと。安達もじりら演出と相談しつつ撮影に入っていきましたが、流石の濱田さんで役をしっかりと自分のものにして物語を引っ張っていってくれました。白井三郎は、坪田文さんの提案から、老年の名探偵となりました。ユーモアとペーソス、さらにピンチにはめっぽう強いじじい探偵。「なんてじじいだ!」と太郎をうならせる人物。そんなファンタジーを体現してくれる俳優は誰だろうとなったときに、草刈さんしかいないだろうと。草刈さんも事前に相談していた以上のアクションでおののいておりましたが(苦笑)、銃の構えひとつとっても草刈さんにしかできない、想像をさらに超える素晴らしいアクションを披露してくれました。濱田さんとの相性も抜群でふたりの丁々発止を観ているだけでも、楽しんでいただけるものになっているのではないかと思います」(櫻井)

 濱田、草刈を中心にキャストたちの名演と合わせて、本作はどのシーンも“画”が非常に美しい。チーフ演出を務める安達もじりは、本作に込めた思いを次のように語る。

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