『100万回 言えばよかった』シム・ウンギョンの繊細な人物描写 宋夏英はどう絡んでいく?

 謎が謎を呼ぶ展開を見せているファンタジーラブストーリー『100万回 言えばよかった』(TBS系)。主人公の相馬悠依(井上真央)と、その恋人で何らかのトラブルに巻き込まれてしまったのか命を落としてしまった鳥野直木(佐藤健)。そして幽霊になってしまった直木の姿がなぜか見えてしまい、巻き込まれていく刑事・魚住譲(松山ケンイチ)。この不思議なトライアングルに第2話で新たな接点が加わる。悠依を道端で助けてくれた脳神経内科医の宋夏英(シム・ウンギョン)が、どうやら譲と何かしらの関わりを持っているようだ。悠依の診察を終えた後、その傍に譲の姿を見つけると「ウソでしょ」と呟いていた。

『100万回 言えばよかった』©︎TBS

 思い返せば直木がいなくなってしまってから出来た悠依と夏英の接点。危機一髪のところを救ってくれた夏英は、悠依にとって命の恩人だ。2回目の出会いは夏英が悠依の働く美容院に客として来店したことから。そしてその後、強い心労から体調を崩してしまった悠依は夏英が勤務する病院に診察に訪れる。彼女たちは生活圏内が近しいのだろうが、それにしてもあまりに偶然が重なりすぎてしまっているようにも思える。そう疑ってしまいたくなるのには、夏英役のシム・ウンギョンがこれまで二面性のある役どころを演じることが多かったからかもしれない。

『新聞記者』©︎2019『新聞記者』フィルムパートナーズ

 シム・ウンギョンといえば、映画『新聞記者』で第43回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞に輝き、注目を集めた。政権がひた隠しにしている闇に迫ろうとする女性記者・吉岡エリカ役を演じ、強い正義感と静かな怒りを秘めた役どころで鮮烈な存在感を刻み込んだ。ジャーナリストだった父親から言われた「誰よりも自分を信じ疑え」という言葉通り、自問自答するシーンが多く、内省を繰り返していた吉岡。届きそうで届かない真実に一人手を伸ばそうともがく孤独な様子に、エリカと観る者の内面がシンクロし、境界線がなくなってしまうほどに引き込まれた。

 彼女は秘めたる熱量や使命感を役に投影させるのが非常に巧みだ。日本での連ドラ初出演作品となった『七人の秘書』(テレビ朝日系)では医療秘書役のパク・サラン役を好演。SEのエキスパートでハッカーの才能も持ち合わせている知性溢れる役どころを見事に演じ切った。優秀でそつがなくブレない芯がある一方で、どこか突かれるとたちまち崩れ去ってしまいそうな脆さと儚さを合わせ持つ役柄が続いているようにも思える。それは1人の人物の中にある揺らぎや少々危うい正義感などの多面性を繊細に丁寧に表現できるからこそだろう。

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 まさにそんなアンバランスさを見事1人の人間に内包して見せたのが、『アノニマス ~警視庁“指殺人”対策室~』(テレビ東京系)での万丞(香取慎吾)の元相棒・倉木セナ役だろう。みなぎる強い正義感ゆえに、それが理不尽にも裏切られた際の反動の大きさは凄まじい。過剰な一義的な正義感というものは常に独裁や暴走と隣り合わせであることを、倉木は身を持ってしてまざまざと教えてくれた。

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