『スタンドUPスタート』竜星涼の豪快さが炸裂! 全て笑い飛ばしてくれる大陽の安心感
「スタートアップしよう!」
“資産は人なり。資産を手放す投資家はいない”を信念とし、自身を“人間投資家”と名乗る主人公の三星大陽(竜星涼)は、事あるごとにこう言って、狙いを定めた“人財”に起業を勧める。
『スタンドUPスタート』(フジテレビ系)第1話では、大陽が中年男性・林田利光(小手伸也)を含め周囲の人間の人生を劇的に変えていくさまが、鮮やかに、強烈に描かれた。
かつてメガバンクの融資部門次長だった林田だが、融資先の選定を誤ってしまい左遷され、現在は子会社の保険会社に出向させられていた。部長とは名ばかりで、本社からはお荷物扱い、子会社でも自身のかつての栄光話ばかりを持ち出してしまい周囲から総スカンを食らっている。家族にも無視され、居場所がない林田は銀行員時代の名刺を手にホステス相手に嘘の自慢話を繰り広げることでしか自身のプライドを保てない。クラブで林田の“なりきりプレー”を牽制する大陽は、さながら竜星が朝ドラ『ちむどんどん』(NHK総合)で演じたヒロインのダメ兄・賢秀を思い起こさせるイントネーションで、ホステスも彼のことを“にいに”と呼んでいた。
竜星涼が『ちむどんどん』で徹底したダメ男像 “沖縄”から“お茶の間”の一番星に!
ついにあのニーニーが、“沖縄の一番星”から“お茶の間の一番星”としての輝きを得た。 沖縄出身のヒロインとその周囲の人々の姿を…
この大陽が他の投資家と異なるのは、彼がベットするのが会社で生きづらさを抱えている人、仕事で失敗や挫折をしてしまった人、将来の夢を諦めてしまった人などさまざまな事情を抱えたいわゆる“訳あり人材”である点だ。
自分の現状をうそぶいて強がってみせるも、ふとした時に自身のことを“何の取り柄もない人間”、“50過ぎのガラクタ”と言って捨てる林田こそ、大陽にとってはこの上ない“資産”だ。人間というものは今置かれている状況に何とか適応しようと、自分に都合がいいように事実を加工コーティングしてみたり、その事実から目を背けてみたり、「所詮仕事なんてこんなもん」「生きるとはこういうこと」と主語を自分以外のもっと大きなものにすり替えてみたりして、どうにか目の前の事実に自身を納得させようとするものだ。
仕事に満たされていなかったり辛い思いをしている人ほど、楽しそうに働く人の姿が眩しく、「そんなヘラヘラして仕事なんてできるものか」と言ってしまいたくなる。林田や、元専業主婦ながら今はマンション管理人としてオーナーからも絶大な信頼を寄せられている音野奈緒(安達祐実)の活躍を素直に喜べない夫・圭一郎(大東駿介)のように。林田も大陽に起業を持ちかけられるも「人生には身の丈ってもんがある」と、はなから取り合おうとしない。この歳で新しい領域に足を踏み出す怖さやリスクも感じているのだろうし、何より子会社でも迷惑がられている自分にできることなどないと自信をなくしてしまい、自分で自分を見切ってしまっているところもあるだろう。