『舞いあがれ!』が描き続けた母の成長と変化 めぐみは浩太の思いをどう受け継ぐのか

 ただ、舞を五島にいる自身の母・祥子(高畑淳子)に預けることになり、強制的に母娘に物理的距離ができたことで、めぐみもあれこれ口出しできず娘のことを黙って見守らざるを得ない期間を経る。舞のことなのに“自分が何とかしなければ”と意気込みすぎていためぐみにとって、この荒治療はかなりの痛みを伴うものだっただろうが、時に相手を信じて待つことの大切さを身を持って学んだ時間でもあっただろう。“干渉しない”ことは何より保護者である自分自身を試される過酷な作業でもある。

 舞が大学を中退してパイロットになりたいと言い出した時にも、なかなか前例のないハードな選択にどうしたって心配が先立つ。もちろんそれは子どもへの愛情深さゆえのことで、「かわいい子には旅をさせよ」とは、言うは易く行うは難しである。しかし、ここで当時は大反対こそされたものの、その後そっと自分の選択を見守り続けてくれた祥子から知らず知らずのうちに受けていた親の愛情や偉大さを追体験したり、舞の中に確かに息づく、浩太が教えてくれた夢を追うことのきらめきやかけがえなさを見出し、見守ることを選ぶ。

 夢を追う人を側で見守るということは、相手やその未来をどれだけ信じられるか、そして自分の未知の世界へ大切な存在がどんどん進んでいってしまうそのたくましい背中を手出しせずに見守り続ける覚悟が問われることでもあるのだと、めぐみを通してつくづく思い知らされる。

 逆風吹き荒れる中、めぐみは亡き夫の夢とどう向き合い、舵切りをするのか。そろそろ悠人(横山裕)のアシストにも期待したい。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:福原遥、横山裕、高橋克典、永作博美、赤楚衛二、山下美月、目黒蓮、長濱ねる、高杉真宙、山口智充、くわばたりえ、又吉直樹、吉谷彩子、鈴木浩介、高畑淳子ほか
作:桑原亮子、嶋田うれ葉、佃良太
音楽:富貴晴美
主題歌:back number 「アイラブユー」
制作統括:熊野律時、管原浩
プロデューサー:上杉忠嗣
演出:田中正、野田雄介、小谷高義、松木健祐ほか
主なロケ予定地:東大阪市、長崎県五島市、新上五島町ほか
写真提供=NHK

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