『舞いあがれ!』が描き続けた母の成長と変化 めぐみは浩太の思いをどう受け継ぐのか

 ヒロイン・舞(福原遥)が父・浩太(高橋克典)との突然の別れに見舞われた『舞いあがれ!』(NHK総合)第14週ラスト。夢半ばでのあまりに唐突な浩太の死に、事態を飲み込めず茫然とした視聴者も少なくなかっただろう。

 突如訪れた別れをすぐには受け入れられず、浩太の死が冗談であってほしいと取り乱す母・めぐみ(永作博美)の姿があまりにリアルで、いたたまれなかった。何の疑いもなくこのまま続くと思っていた日常が突如途絶えてしまう理不尽さ、誰もが予期しなかった喪失、大混乱を「嘘……嘘やぁ、なぁ!」というめぐみのあの咄嗟のリアクションが何より物語っていた。少し前に「いつまでたっても、楽にしたられへんな」と申し訳なさそうに詫びる浩太と「楽やないけど、楽しいで」と目を生き生きとさせながら心から答えるめぐみの、互いを労る夫婦のやり取りがあったからこそ、より一層彼らの無念さ、やるせなさが押し寄せてくる。

 岩倉螺子製作所を株式会社IWAKURAに生まれ変わらせたばかりでなく、その後3億円にものぼる設備投資をして新規事業に着手することを悩みながらも決断した浩太がそのことを切り出した際にも、最初こそ心配そうな表情を浮かべたものの「もう決めたことなんやな」と理解を示していためぐみ。どんな逆境も2人で乗り越えてきた岩倉夫婦の羅針盤が突然なくなってしまったのだ。

 思えば、本作は舞だけでなく彼女を側で見守り続けてきためぐみの成長や変化も丁寧に描いてきた。夢を追う者の葛藤や挑戦だけでなく、それを応援する側に否応なしに課される成長やタフさもすくい上げてきてくれた。

 舞が幼少期の頃、原因不明の高熱にうなされる姿を心配するあまり、先回りして少しでも舞に負担になりそうなものは除外し近づけぬようにしてきた過保護なめぐみの姿が懐かしく思い起こされる。彼女自身、大学時代に浩太と出会い、実家からの反対を押し切って中退し、駆け落ち同然で結婚した手前、“自分で選んだ道なのだから自分だけで解決しなければ”と気負いすぎてしまっていたところがあったのかもしれない。

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