『TOKYO MER』が『コード・ブルー』から継承したレガシー 救命ドラマの新章開く

 『TOKYO MER~走る緊急救命室~』(TBS系)は救命救急医の喜多見(鈴木亮平)率いる「TOKYO MER」が最新設備のERカーで災害や事件・事故の現場に駆け付け、人命救助に奔走する連続ドラマだ。喜多見のモットーは「待っているだけじゃ、助けられない命がある」で、自らの危険を省みず率先して傷病者の救護にあたる。2021年7月から9月にかけての本放送では命がけの出動で死者ゼロを達成する姿が感動を呼び、回を追うごとに視聴者の反応も白熱。本稿では救命ドラマに新章を開いた『TOKYO MER』の意義を考察する。

 生と死は文学の一大テーマであり、映像作品でも医療ものは広く親しまれてきた。瀕死のけが人や余命わずかな患者を救うため、困難な手術に挑む中には命がけのドラマがあり、視聴者はかたずを飲んで事のなり行きを見守る。命を扱う医療の現場とその周辺で繰り広げられる人間模様には、患者の家族・恋人だけでなく、医療を提供する医師や看護師の葛藤も含まれる。彼らの苦悩を通じて「人間とは」「医療とは」という根源的な問いに光が当てられる。

 豊穣な可能性を秘める医療ドラマで救命救急は花形的な存在だ。天才的な手腕を持つ医師が1秒を争う状況で外科手術を行い、襲い来るアクシデントや不慮の事態に全力で立ち向かうストーリーは緊張感とスリルに満ちている。海外ドラマブームの一翼を担った『ER緊急救命室』以降、日本でも救命救急をテーマにした医療ドラマが多く制作されてきた。その代表的な作品が『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』(フジテレビ系)である。

 心肺停止など緊急事態発生時の招集コールに由来する『コード・ブルー』は、副題からも明らかなように、2007年に法制化されたドクターヘリがモチーフになっている。山下智久、新垣結衣、戸田恵梨香らが演じるフライトドクターの奮闘を通じて、災害医療の厳しさと命の尊さを伝える同作は足かけ10年にわたる人気シリーズとなった。

 『コード・ブルー』が残したものは多くあるが、この国における救命ドラマのあり方を確立した点が大きい。新設されたドクターヘリという舞台設定。チームで治療に当たり、複数人の視点が交錯する会話劇の面白さ。主人公が様々な経験を積み、一人前の医師に成長する過程は応援したくなるし、恋愛模様を織り交ぜた青春群像劇も見応えがあった。主演級を配したキャスティングは豪華で、メインキャストの男性2人、女性3人というバランスも秀逸だった。

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