ジャン=リュック・ゴダール、アイヴァン・ライトマンら偉大な映画監督たちを偲んで
日本人監督でも、井上昭監督が1月9日に、恩地日出夫監督が1月20日に。3月21日には青山真治監督、8月20日に小林政広監督、11月12日に大森一樹監督、11月27日に崔洋一監督。そして12月8日に吉田喜重監督と、ビッグネームの訃報が相次いだ。
大森一樹監督
幼少期に『ゴジラ』シリーズに熱中し、高校生の時にフィルムセンターで観た『ヒポクラテスたち』に魅了された筆者としては、大森監督の作品群を挙げずにはいられない。彼もまた、先に挙げたボグダノヴィッチ監督やアイヴァン・ライトマン監督と同様、娯楽映画の才を持った職人監督であった。
初期の3作品や、医大卒という自身のバックグラウンドを活かした作品。吉川晃司の3作品に斉藤由貴の3作品とアイドル映画もお手のもの。もちろんSMAPの『シュート!』も名作だ。2000年前後にはバラエティ番組の企画映画やご当地映画、アニメ映画も手掛けるなどその多彩なフィルモグラフィには常々驚かされてきた。あえていま、1本を選ぶのであれば大森監督の最後のヒット作になった『T.R.Y.』だ。織田裕二を筆頭に、アジア圏のキャストが集結し、上海を舞台に描かれる詐欺師たちの騙し合い。ここまでスケール感と小粋さを重視した突き抜けた娯楽映画は最近ではめっぽう少なくなった。この機会にもっと評価されてほしいと願うばかりだ。
他にも1月に亡くなったジャン=ジャック・ベネックス監督は、やはり『ベティ・ブルー/愛と激情の日々』(インテグラル版ではなく2時間版の方)が本当にすばらしい。96歳の大往生となったウィリアム・クライン監督は、『ポリー・マグーお前は誰だ?』が何度観ても秀逸で画面に釘付けになる。日本ではアテネ・フランセ文化センターでの定期的な特集上映ぐらいでしか鑑賞機会のないジャン=マリー・ストローブは、2020年の『La France Contre les robots』を最後にダニエル・ユイレの元へと旅立った。偉大な監督たちのご冥福をお祈りすると共に、映画をありがとうございましたと伝えたい。