『舞いあがれ!』福原遥は“強さ”をしっかり演じていた 後半に向けて振り返る舞の成長

『舞いあがれ!』福原遥と舞の成長を振り返る

 また、筆者が忘れられないのは、何のために訓練してるのか分からなくなってしまった舞が、大河内からアドバイスを受け大粒の涙を流す場面だ。大空を飛ぶ純粋な楽しさ、喜びを胸に航空学校に入学してきた舞だったが、いつしか笑顔は消え、同期の水島(佐野弘樹)がフェイルされてしまったことへの悔しさをバネにして、大河内を見返すことへと目的が変わってしまっていた。“鬼教官”として冷酷に思えていた大河内がふとした時に見せた優しさ。思い出すのは、人力飛行機編でなにわバードマンの部員たちが開くたこ焼きパーティーで舞が感極まる場面だ。記録飛行の本番を前に、部員一人ひとりが人力飛行機にかける熱い思いを舞が受け止めるというシーンであり、涙の意味は違えど、パイロットに求められるチームワークの大切さは共通している部分。もちろん、福原自身も一人で『舞いあがれ!』という作品を作り上げているわけではなく、同世代の役者や吉川晃司のような先輩との共演を通じて舞という人物を生き、成長していると言えるだろう。それは福原がSNSに1話ごとの感想や思いを大切に綴っていることにも強く表れている。

 生きづらさを抱えた、本音を言えずにいる少年・朝陽(又野暁仁)と出会う第12週「翼を休める島」では、舞が当時の自分を重ねた朝陽に寄り添うことで成長した強さを示す構造にもなっている。だが、折り返しを迎える第13週「向かい風の中で」で、舞は再び大きな逆境に立ち向かおうとしている。『おはよう日本』(NHK総合)の“朝ドラ送り”、『あさイチ』(NHK総合)の“朝ドラ受け”では、柏木と貴司(赤楚衛二)の間で揺れ動く舞が持つ天然のあざとさが話題にのぼることが多くなってきているが、その要素が後半の物語にどう効いてくるのかも大きなポイントではあるだろう。

 12月29日には、「幼少編」「人力飛行機編」「航空学校編」などの物語をダイジェストにまとめた「『舞いあがれ!』総集編(前編)」の放送も決定。舞、そして福原の成長を感じられる絶好の機会だ。

参照

※1. https://realsound.jp/movie/2022/09/post-1125432.html
※2. https://realsound.jp/movie/2022/10/post-1158255.html

■放送情報
NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:福原遥、横山裕、高橋克典、永作博美、赤楚衛二、山下美月、目黒蓮、長濱ねる、高杉真宙、山口智充、くわばたりえ、又吉直樹、吉谷彩子、鈴木浩介、高畑淳子ほか
作:桑原亮子、嶋田うれ葉、佃良太
音楽:富貴晴美
主題歌:back number 「アイラブユー」
制作統括:熊野律時、管原浩
プロデューサー:上杉忠嗣
演出:田中正、野田雄介、小谷高義、松木健祐ほか
主なロケ予定地:東大阪市、長崎県五島市、新上五島町ほか
写真提供=NHK

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