『silent』最後まで“言葉”を伝えあうことを選んだ紬と想 “花”に託されたそれぞれの想い
わかりあうためには努力が必要だ。しかし乗り越えるたびに絆はより強くなり、相手のことをより深く知ることができるのではないだろうか。似ている趣味で、似ている考え方で、高校生の頃から思い合っていた紬(川口春奈)と想(目黒蓮)にだって、すれ違いは起きる。『silent』(フジテレビ系)の最終話では、2人がそれをどう乗り越えるのかが描かれる。諦めるのは簡単だが、最後まで「言葉」を伝えあうことを選んだ2人は互いにしっかりと向き合うのだった。
紬の声が聞こえなくなってしまったこと、一緒にいることで苦労させてしまうこと、紬と一緒にいることが想にとってはいつしか悩みの尽きない時間になってしまう。想はそんな付き合いにくじけそうになるが、紬は、最後まで想ときちんと話したいと思っていた。諦めずに対話を続けることで、「一緒にいる」道を選べるのではないかという思いがあったのだろう。そして2人は、話し合いの場を思い出の教室にする。これまで素直に伝えられなかった思いを、黒板にチョークで書き、ぶつけあうのであった。
『silent』の最大の魅力ともいえる数多の伏線が回収され、そこには紬と想はもちろん、奈々(夏帆)や春尾(風間俊介)、湊斗(鈴鹿央士)たちの人生までもが彩り豊かに描かれた。奈々のおすそわけは様々な人を巡り巡ってその思いを乗せつつ、紬と想の元にたどり着く。カスミソウの花言葉は「幸福・感謝」だ。この作品の中の人々が、どれほど相手を強く想ってきたのかが深く伝わり、心が温まる思いだ。「花には音はないけど、言葉がある。気持ちを乗せられる」と奈々がうれしそうに話したように、それぞれが花に気持ちを託したのだ。これまでずっと言葉で伝えることを最大限に重視する物語でありながらも、言葉では伝えきれない「愛」や「思いやり」、行間に含まれた「絆」があふれ出すような瞬間であった。
最後まで皆から心配された紬と想の行く末であるが、どうやら2人なりの決断がされたようだ。だが、私たちにはその「言葉」を明確に知ることはできないままである。2人には2人だけの大切な関係性があり、2人だけの生き方があり、2人なりの向き合い方がある。想の気持ちは、想の声で、言葉で、たった一人、紬にだけ伝えられたのだ。それがあまりにも紬と想らしくて、グッと心を掴まれる。〈イルミネーションみたいな 不特定多数じゃなくてただ1人 君であってほしい〉と流れる主題歌「Subtitle」の歌詞と、ラストシーンの輝くイルミネーションに紬が言った「イルミネーション見に来たのに、話しながらだと全然見れないね」、それに応える想の「別にいいよ」のやりとりが作品とリンクし、2人が乗り越えてきたものの大きさを痛感させられる。
今一度繰り返すが、わかりあうためには努力が必要だ。『silent』は、その物語を通して、「伝えること」と「受け取ること」を描いてきた。時には声だけでなく手話や筆談を交え、どうしたら相手にわかってもらえるのか、どうしたら真っ直ぐ受け止めることができるのかを伝えてきた。この作品を通して、我々が当たり前のように受け取ってきたものが本当は特別なプレゼントだったかもしれないと今さらのように気づかされる。そこには自分が想像できていなかった想いまでが込められていたかもしれない。誰かの苦しみを受け取ってしまったかもしれない。些細な受け取り方の誤解は、関係性を大きく変えかねないことも、我々は奈々と春尾の姿から学んだ。だからこそ、相手が伝えてくれたことに真摯でありたい。クリスマスを目前に、暖かく優しいこの物語を通して最高のプレゼントに気づけるような気がする。
■配信情報
木曜劇場『silent』
FODにて配信中
出演:川口春奈、目黒蓮(Snow Man)、鈴鹿央士、桜田ひより、板垣李光人、夏帆、風間俊介、篠原涼子ほか
脚本:生方美久
演出:風間太樹
プロデュース:村瀬健
音楽:得田真裕
制作:フジテレビ
©︎フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/silent/
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