『舞いあがれ!』柏木、パイロットとして大丈夫? エリートの鎧を脱いで見えた意外な一面

 “朝ドラ”こと連続テレビ小説『舞いあがれ!』(NHK総合)の第11週「笑顔のフライト」では、舞(福原遥)が困難を乗り越えて最終審査を無事終えることができた。再び宮崎校に戻る前に、舞と柏木(目黒蓮)は自然いっぱいの公園でデートして、お互いの気持ちを確かめ合う。そして柏木は舞の実家に挨拶に行く。

 週の前半は、大河内教官(吉川晃司)の成熟したかっこよさ、週の後半は柏木の蒼さゆえの魅力が描かれた形となった。飛行中、天候の問題で帯広空港から釧路空港に着陸を余儀なくされた舞が激しい不安にかられているとき、「右を見ろ」と大河内の声が聞こえ、見れば大河内の飛行機が飛んできて「私が誘導する」と言う場面は問答無用にドラマティックだった(第51話、第52話)。

 大事な仲間を容赦なくフェイルする憎き鬼教官かと思いきや、実は冷静沈着に物事をジャッジしているだけの大河内。徹底的に厳しくしないと多くの乗客の命を乗せて飛ぶパイロットは務まらない。舞たち新人はまずその自覚が必要なのである。舞はじょじょに大河内の本質に気づいていく。もともと舞は、多くの人たちの思いを乗せて空を飛びたいと願っていたから、大河内の教えによって自分の原点に立ち戻ることができたといえるだろう。

 当初、大河内はもっと激しいキャラに設定されていたらしい。吉川の提案で物静かだが圧がある人物に変更されたという。その変更は成功し、大河内は嫌われることなく、むしろおおいに受け入れられた。とかく怒鳴ったり口汚かったりする人物は嫌われる。どんなに内心はいい人であっても、その内面を慮る余裕は他者にはないから、偽悪的な言動は損である。大河内のように静かに厳しいほうが本質を理解されやすい。むしろそれがわからない柏木たちの未熟さが際立つ。主要人物を厳しい大人の被害者として描かず、むしろ若気の至りとして描いたことに現代性を感じる。

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