『ベルセルク 黄金時代篇』が2022年に放送された意義 闇の深さから知る光の美しさ
故・三浦建太郎(原作は現在も森恒二氏が監修を務め連載が続けられている)の『ベルセルク』の「黄金時代篇」を描いたテレビアニメ『ベルセルク 黄金時代篇 MEMORIAL EDITION』が佳境を迎えている。
本作は、10年前に劇場アニメ映画3部作として制作された作品に、新規カットを追加しテレビアニメ向けに再構成した作品だ。アニメーション制作を担当したSTUDIO4°Cによるハイレベルな映像が堪能でき、R指定のレーティングも辞さない姿勢で制作された本作は、過去何度か映像化された『ベルセルク』のアニメの中でも、最も原作の深さに近づいたと言える完成度だ。
本作が2022年に再び放送・配信された意義はなんだろうか。この黄金時代篇こそ本作のエッセンスが最も濃く宿る物語である。三浦氏の残した空前絶後の傑作は、今の私たちにはあまりにも鮮烈だ。人の生き様に嘘のないその語り口は今なお、多くの人を惹きつける力を持っていることが改めてよくわかる。
踏み込んだ描写なくしては届かない絶望や怒りがある
本作が映画として企画されたのは、10年前なら必然だっだ。テレビの放送コードの限界を超えてしまうからだ。
90年代に製作・放送された『剣風伝奇ベルセルク』も放送コードギリギリに挑むような描写もあり、完成度の高い作品だが、本作はさらに突っ込んだ描写をしている。
身体が飛び散る戦場の暴力表現と性描写が数多い本作は、そもそもテレビ向きではなかったはずだ。そして、そうした描写にためらいがあると、本作の本質にはなかなか届かない。血なまぐさい戦場で争う人々のリアリティと殺伐さがなければ、主人公ガッツの置かれている過酷な環境は伝わりきらない。性描写もキャラクターたちの破滅を導くものと、深い絆で結ばれるものと様々なタイプの描写がなされるが、そこまで踏み込まないと描けない深い絶望や愛情が存在する。少なくとも、本作を観ていると、その必然性に大きな納得感がある。
実際、本作が映画として公開された時には、2作目はPG12、最終作はR15+のレーティングとなった。そこまで踏み込んだ描写をしたからこそ、三浦氏の原作に最も迫る映像化となったのだ。
本作は、そうした目につきやすい派手な描写ばかりが優れているわけではなく、キャラクターの芝居の作画も巧みでライティングも美しい。手描きの作画と3DCG両方を駆使して描かれる合戦シーンは迫力に満ちており、10年前の作品であっても現代アニメのトップクラスの作品と比較してもそん色ない。
人のリアルな息遣いが全編に渡り、キャラクターの芝居によって高レベルで表現されており、だからこそ、絶望的なシーンは心の底から絶望感を感じるし、そうした絶望を目の当たりにした時の人の弱さも痛切に伝わる。そして、理不尽な運命に対する怒りもまた、迫真の臨場感を持って視聴者に伝わってくるのだ。