満島ひかり、真骨頂の無音の演技 『First Love 初恋』が“プルースト効果”をもたらした所以

 何かやましいことや隠したいことがある時に泳ぐ視線、愛しい人を見る時の情のこもった目つき、虚しさを表す陰りなど、場面に応じて自由自在に瞳の動きから水分量、光までも操る。いや、むしろ役が憑依して、彼女を操っているかのようにも見える。

 満島の場合は瞳だけじゃなく、身体全体が役に動かされているといっても過言ではない。その力が最大限に発揮された場が、『初恋の悪魔』(日本テレビ系)だ。満島が演じたのは、松岡茉優演じる星砂のもう一つの人格である“蛇女”をかつて救った女性・リサ。第6話から登場したリサは殺人の容疑で服役しており、過酷な取り調べにより心を閉ざしていた。そのため、第6話でも話した台詞はたったひと言で、それ以降もほとんどなかった。それでもなお、林遣都演じる鹿浜から面会室で星砂の名前を聞いた瞬間の瞳や身体の動き、体温の上昇がありありと伝わってきた。

 この無意識下における身体の反応を芝居で出せるところが満島の名優たる所以であり、また、においや音で過去の記憶が蘇る現象を一つの仕掛けとして取り込んだ『First Love 初恋』に必要不可欠だったと断言できる根拠だ。満島に2度オファーを断られてもなお、諦めきれずに3度目でようやく承諾をもらったという寒竹ゆり監督も彼女の芝居を「フィジカルがおしゃべり」と評価している(※)。本作には満島の魅力を改めて実感する場面が多々あるが、特に第8話で也英が宇多田の「First Love」を聴いた時の言い尽くせない思いが溢れ出る、無音の演技は必見だ。もはや台詞は不要ともいえる彼女の真骨頂を堪能してほしい。

参考

※ https://lee.hpplus.jp/column/2487663/
※ https://realsound.jp/movie/2022/11/post-1171060.html

■配信情報
Netflixシリーズ『First Love 初恋』
Netflixにて、全世界独占配信中
出演:満島ひかり、佐藤健、八木莉可子、木戸大聖、夏帆、美波、中尾明慶、荒木飛羽、アオイヤマダ、濱田岳、向井理、井浦新、小泉今日子
Inspired by songs written and composed by Hikaru Utada / 宇多田ヒカル
監督・脚本:寒竹ゆり
エグゼクティブ・プロデューサー:坂本和隆(Netflix)
プロデューサー:八尾香澄
制作プロダクション:C&I エンタテイメント
原案・企画・製作:Netflix

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