“日本三大悪女”北条政子も人間だった 『鎌倉殿の13人』三谷幸喜の女性の描き方の変化

 三谷幸喜が脚本を手掛ける大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK総合)は、鎌倉時代に鎌倉殿を支えた武士・北条義時(小栗旬)が主人公の物語である。第46回「将軍になった女」では次の鎌倉殿をめぐり、義時と後鳥羽上皇(尾上松也)のとの対立が深まっていく中、義時の暴走を防ぎ、鎌倉に従う御家人の不満を収めるために政子(小池栄子)が尼将軍となる姿が描かれた。

 政子は『鎌倉殿の13人』のもう一人の主人公と言える存在だ。彼女は義時の姉で、亡くなった源頼朝(大泉洋)の妻。頼朝亡き後は義時と共に、鎌倉幕府を支えてきた。頼朝亡き後、鎌倉を去るといった義時を引き止めたのが政子だったことを考えると、武士の世を守るために次々と仲間を粛清していく義時の暴走の原因は彼女が作ったとも言える。だからこそ、彼女は義時の抑止力となるため、自ら尼将軍になること選択したのだが、何より彼女が守ろうとしたのは、謀反人として今にも処刑されそうになっている妹の実衣(宮澤エマ)だったことが、最後にわかる。

 源実朝(柿澤勇人)と公暁(寛一郎)が亡き後、源氏の嫡流である息子の阿野時元(森優作)を次の鎌倉殿にしたい実衣は、朝廷から密かに宣旨をもらおうと目論む。しかし、密かに相談した三浦義村(山本耕史)は義時と通じており、時元は謀反人として自害に追い込まれる。

 身内だからと処分を甘くすれば、周囲に示しがつかないため、厳しい罰を実衣に与えようとする義時に対抗し、尼将軍となって実衣を守ろうとする政子。客観的にみると政子は権力を私物化していると言えないこともないが、公平に振る舞う義時の方が、権力を私物化しているように見えるのが、本作の面白さだ。

 守るべきは武家社会という組織か、それとも血の繋がった家族か? という公と私の葛藤は本作で何度も繰り返されてきたテーマだが、簡単に結論が出せないのは『鎌倉殿の13人』の世界では、家族と社会と個人がシームレスに繋がっており、別々に切り分けることが難しいからだ。それはそのまま、母であり為政者でもある政子の葛藤でもある。

 『鎌倉殿の13人』が、これまでの三谷作品と大きく違うのは、女性の描き方だ。それは、女であっても権力闘争のパワーゲームから逃れることはできないという物語に強く現れており、現代を生きる我々の感覚が大きく反映されていると言える。

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