『エルピス』眞栄田郷敦が吐き捨てる組織の腐敗 傍観者が生む権力に都合の良い状況

 事件をタブー視し、風化するまで見て見ぬふりをする警察はたしかに腐りきっている。一方で、恵那が認めるように必ずしも組織は一枚岩ではなく、「検察や警察や裁判所にもきっといろいろな人がいる」。そして、物事がどちらに転ぶかは「その時の流れや空気で決まる」。恵那が話したことは、一見すると人間の良心を信じているように聞こえるが、裏を返すと腐った組織を温存しているのが、私たち一人ひとりであることも示唆している。事実、平川のいる署内では誰もが空気を察して口をつぐんでいた。冤罪事件の報道で冷や飯を食わされている拓朗は恵那を「平和ボケ」と言って反発するが、恵那は自分も我慢しているのだと逆ギレする。

 嘘をこれ以上飲み込めなくなり、事件の真相解明に立ち上がった恵那が古巣の報道番組でジレンマを感じていないわけはなく、忙しさに紛れてあやふやになりそうな感情を必死で握りしめているわけで、かたや拓朗や村井(岡部たかし)は放っておくと拗ねたり、腐って寂しさから嫌味を口にする。そうした現状が権力を握る人間にとって都合の良いことも事実で、その繰り返しによって都合の悪い真実に蓋がされてきた。だから忘れないこと、腐らないことが大事なわけだが、死んだ目の拓朗と血色の悪い恵那が、執拗なまでに食い下がっている今はまだ希望があると思える。

■放送情報
『エルピスー希望、あるいは災いー』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週月曜22:00~放送
出演:長澤まさみ、眞栄田郷敦、三浦透子、三浦貴大、近藤公園、池津祥子、梶原善、片岡正二郎、山路和弘、岡部たかし、六角精児、筒井真理子、鈴木亮平ほか
脚本:渡辺あや
演出:大根仁ほか
音楽:大友良英
プロデュース:佐野亜裕美(カンテレ)
制作協力:ギークピクチュアズ、ギークサイト
制作著作:カンテレ
©︎カンテレ
公式サイト:https://www.ktv.jp/elpis/
公式Twitter:@elpis_ktv

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