三谷幸喜にしかできない終わらせ方 『鎌倉殿の13人』が残したとてつもなく重い課題

 三谷幸喜が脚本を手がける大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK総合)が、ついに最終回をむかえた。本作は、鎌倉幕府を支えた執権・北条義時(小栗旬)の半生を、血で血を洗う権力闘争を通して描いた物語。最終回(第48回)となる「報いの時」は約60分の長尺となり、序盤の20分では、承久の乱が描かれた。

 尼将軍・政子(小池栄子)の演説に心を動かされ、後鳥羽上皇(尾上松也)が率いる官軍と戦う決意をしたかに思えた御家人たちだったが、できれば戦いたくないというのが本音だった。士気が落ちる前に北条の覚悟をみせるべきだと思った義時は、息子の北条泰時(坂口健太郎)を総大将にして京へと進軍させる。やがて兵は19万騎にのぼり、圧倒的な兵力で官軍を打ち破る。後鳥羽上皇は敗北し、隠岐に逆輿となり、朝廷と武士の力関係は逆転する。

 戦乱が終わり、争いのない平和な時代が来ると語る政子。しかし、京では幼い先帝を復権させようとする怪しい動きが起こっていた。義時は災いの目を摘むため、先帝の命を奪おうと目論む。

 最終回は、後に征夷大将軍となり江戸幕府を開くことになる徳川家康が、承久の乱の様子が書かれた『吾妻鏡』を読む場面から始まる。2023年のNHK大河ドラマ『どうする家康』で家康を演じる松本潤の出演に驚いたが、ただのサプライズではなく、ここから先、義時たちが作った武士の世が江戸時代まで続いていくことを暗に示しているように感じた。

 物語のクライマックスになると思われた承久の乱は、合戦シーンこそ力の入った映像だったが、物語前半であっさりと終わらせたという印象が強い。同じ三谷幸喜が手がけたNHK大河ドラマ『真田丸』でもそうだったが、三谷は、戦争に至るまでの政治的状況や水面下での駆け引きはじっくり丁寧に描くが、いざ戦いがはじまると実にあっけなく終わる。これは三谷の戦争観のあらわれであり、彼が書きたいのはアクションではなく、水面下で行われるディスカッションなのだろう。

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