『すずめの戸締まり』は朝ドラの総集編? “すべての映画がドラマになる”が進行中

 樋口真嗣が監督し庵野秀明が製作と脚本を担当した映画『シン・ウルトラマン』にも、同じ手触りを感じた。

『シン・ウルトラマン』賛否両論のさまざまな要素を検証 日本映画としての“課題”も

『シン・ゴジラ』(2016年)、『シン・エヴァンゲリオン』(2021年)と続く、既存の作品を新たな解釈で劇場作品として作り直す試…

 本作は特撮テレビドラマ『ウルトラマン』のリメイク作だが、映画館で観た時は30分のドラマを5作並べて、一つの物語に圧縮して繋げた物語という印象だった。

 新海は『君の名は。』を、樋口と庵野は『シン・ゴジラ』(樋口は監督、庵野は総監督)を、2016年に大ヒットさせたが、2022年に両者が手掛けた映画が、テレビドラマのダイジェストにしか見えないことに、筆者は困惑した。

 倍速視聴やファスト映画が求められる世間の風潮に適応した結果だと言えばそれまでだが、ZIPファイルのように情報が圧縮された過密な物語は、鑑賞後に観客が解凍して行間を自ら補完し、SNS等で考察されることを前提に作られているのだろう。

 つまり、他の映像や情報に触れることで、初めて映画が完成する仕掛けとなっている。これはテレビアニメの新エピソードを劇場公開した『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』や『劇場版 呪術廻戦 0』といったアニメ映画や、各映画や配信ドラマが物語として繋がっているマーベルのヒーロー映画にも言えることだ。

 上記の作品も独立した映画というよりは、連続ドラマの一部という印象である。つまり「すべての映画はドラマになる」とでもいうような自体が映画館では進行しているのだ。ドラマ評論家を名乗っている筆者としては、歓迎すべき状況なのだろうが『すずめの戸締まり』の忙しなさがこれ以上、圧縮・加速していった時、自分は振り落とされるのではないかと不安である。

■公開情報
『すずめの戸締まり』
全国公開中
原作・脚本・監督:新海誠
出演:原菜乃華、松村北斗、深津絵里、染谷将太、伊藤沙莉、花瀬琴音、花澤香菜、松本白鸚
キャラクターデザイン:田中将賀
作画監督:土屋堅一
美術監督:丹治匠
音楽:RADWIMPS、陣内一真
主題歌:「すずめ feat.十明」RADWIMPS
制作:コミックス・ウェーブ・フィルム
制作プロデュース:STORY inc.
配給:東宝
©︎2022「すずめの戸締まり」製作委員会
公式サイト:https://suzume-tojimari-movie.jp/
公式Twitter:https://twitter.com/suzume_tojimari
公式Instagram:https://www.instagram.com/suzumenotojimari_official/
公式TikTok:https://www.tiktok.com/@suzumenotojimariofficial

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