『舞いあがれ!』福原遥による圧巻の演技が光るフライトシーン 吉田と柏木とのフラグも?

『舞いあがれ!』福原遥による圧巻の演技

 ついに初フライト日がやってきた。連続テレビ小説『舞いあがれ!』(NHK総合)第42話では、大河内教官(吉川晃司)の指導のもと舞(福原遥)、柏木(目黒蓮)、水島(佐野弘樹)のAチームが初めて空を飛ぶ。

 舞にとって空を飛ぶことは、これが初めてではない。なにわバードマンのみんなとの思い出、体重を落としながら体力をつけた特訓の日々、その先に見えた景色。舞は、またあの景色を見ようとしている。まずは安全にフライトが行えるか、学生たちが判断し、教官に説明するブリーフィングからスタート。そしていよいよ迎えたテスト、大河内教官に指名されたトップバッターは舞だった。教官に指摘されていたプロシージャーも冷静に、しかし以前よりもスピード感を持ってクリア。無事、テイクオフする。

 第42話は、何と言ってもフライトシーンの緊張感、真剣さが画面の向こう側の私たちにも伝わる、共感できる回として非常に魅力的だった。その共感性を担っていたのが、福原の類まれなる演技力と飛行機の映し方だったように思える。視聴者としては、舞がプロシージャーを行うシーンはなにわバードマンの時のそれを彷彿とさせるし、あの時はいっぱい漕いでいたから汗だくになっていたのに対して、今回は緊張だけでやはり前髪が汗びっしょりになっていることに気づけるのが嬉しい。

 何より素晴らしかったのは、上昇し切って一息つけた瞬間、目前の景色と“自分が飛行機を飛ばした”という事実に静かに感動する舞の表情。怖いけど、興奮していて、頑張った甲斐があって、楽しい。「やったー! 飛べたぞー!」なんて、簡単な感情ではないそれらの複雑な気持ちを、完全な笑顔ではなく涙目になりながら色々なものを堪えるかのような表情を以てして、福原は見事丁寧に表現した。呼吸の仕方も含めて、彼女の迫真の演技が私たちの共感性を高めたことは自明である。加えて、離陸時に舞(コックピット側)の正面をむく視点ではなく、機体の横側から翼を映す演出がとてもよかった。なぜなら、私たちが飛行機に乗るとき、離陸時に見る風景は“あれ”だから。パイロット視点を映しても、「飛んだ」という実感が湧きにくいそれを、あえて乗客視点にしているのは芸が細かい。そういった私たち視聴者の知る「飛行シーン」としての画作りを忘れないことで、シークエンス全体を置いてけぼりにせず共感性を高めていたように思える。加えて、水辺に向かって飛んだことも、人力飛行の時の琵琶湖を想起させるだけでなく、それよりもスケールが上がっているとを舞自身が自覚できるような演出になっていたかと思う。

 細かいと感じた点は、他にもある。舞が旋回の時にやたら焦って上手くいかなかったのも、人力飛行が前にしか進まなかったからだ。テストフライトが終わった後も、彼女の顔が真っ白になっていたり、他のメンバーもご飯が喉を通らないような様子で黙って俯いていたり。「全然ダメだった、でも、飛んだな……」という、実感が徐々に湧きながら、一概に興奮することもできないのは彼らがテストフライトを通して改めて“誰か”を乗せて飛ぶことを理解したからではないだろうか。

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