『相棒』が突きつけた若手研究者たちの窮状 右京と亀山、2つの“正しさ”を提示する誠実さ

『相棒』が突きつけた研究者たちの窮状

 良かれと思ってやっていたことが悲劇に繋がることがある。11月9日放送の『相棒 season21』(テレビ朝日系)第5話は、それぞれの良かれという思いが絡まり合って、爆弾事件と監禁事件が引き起こされてしまった。

 大学構内に爆発物を仕掛けたという平山翔太(山本涼介)という学生は、「次は人が死にます」「頑張って探してください」と警察を挑発する動画を送りつけてきたどころか、共同研究者である准教授の三沢(山崎潤)を監禁もしていた。しかも大胆にも自ら警察と接触し、彼が所属する研究室で起こった女子学生・森原真希(大坪あきほ)の死亡事故の再調査を要求してきた。右京(水谷豊)と亀山(寺脇康文)は三沢の監禁場所を特定しつつ、死亡事故の真相に迫っていく。

 研究室には一応、毎年各研究室ごとに予算がついている。だが、それは研究を進めるためにはギリギリのもので、研究の過程で必要になったものが資金がなくて買えなかったり、少しでも節約するために消耗品を使いまわしたりすることもある。公的機関からの助成金や技術に注目した企業からの資金提供が受けられればそういうことを気にすることなく、研究に臨めるのだが、平山や森山が所属する研究室の財政状況は厳しいらしく、森原の事故で破損した黒焦げの天井すら直すことができないでいた。右京と亀山は、森原がそんな現状を訴える術として、爆発事故を独自に計画、結果としてそれに巻き込まれてしまったことを突き止めた。

 真実を突き止めた後の右京と亀山の行動には、それぞれの特徴がはっきりと出ていた。三沢は森原の意図を理解した上で、事故をきっかけに研究室の窮状を伝えようとした。森原も三沢も平山が発案していた研究が世間のためになると考え、良かれと思っていたのだ。しかし右京は、「その結果がこれです」と三沢を厳しく断罪。「あなた方のやっていたことは間違っていたとしか言いようがありません」と射抜くような目できっぱり言い切った。

 一方、平山は森原が三原にいいように利用され、死んでしまったと誤解していた。真実を伝えた亀山は「真希さんも三沢先生も間違ってはいたけど、君の研究を完成させようとしていたんだ」と平山を諭すように優しく語りかけた。森原や三沢のことを信頼し、一緒に研究を進めたい一心だった平山にとっては、とても響く言葉だったことだろう。

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