『チェンソーマン』日常シーンのアニオリ描写が光る 作画担当者たちの“発表”にも注目
激しい戦いと、細部にまでこだわり抜かれた静かな日常。『チェンソーマン』第4話はアニメオリジナル描写が息吹く回となった。
『チェンソーマン』第4話予告&先行カット公開 デンジの“目的”にパワーが呆れる
テレビ東京系ほかにて放送中のTVアニメ『チェンソーマン』第4話の予告映像と先行カットが公開された。 『少年ジャンプ+』…
コウモリの悪魔にニャーコを奪われ、自らも食われてしまったパワー。彼女がニャーコのケージを抱いて思い返す、自然の中の生活風景は原作漫画ではテンポ良く描かれていたのに対し、アニメは狩猟の瞬間までを捉える。彼女の過去を彩る色調の繊細さは、後半の早川家の日常シーンにも映えていた。パワーとニャーコを救出したデンジ。しかし、間髪入れずに自称・コウモリの悪魔の恋人であるヒルの悪魔に襲われてしまう。
アクションシークエンスはこれが3度目だが(ゾンビの悪魔、コウモリの悪魔)、回を増すごとに良くなっていくように感じた。戦闘開始からデンジがヒルの悪魔に投げられるシークエンスの原画を担当したのは、ドイツ人のフリーランスアニメーターのChris。そして、そこから繋げて煙の中にいるデンジが攻撃を防御するシーンはMichael Sungが担当。Chrisはアニメ『ワンピース』第1004話や、『ブラック・クローバー』第162話などでその才能を発揮した人物であり、Michael Sungは何を隠そう『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ワールド ヒーローズ ミッション』の激しい終盤戦闘シーンのキーアニメーションを担当した人物である。
もちろん、他にも数多くのアニメーターが『チェンソーマン』に関わっているが、興味深いのはそれぞれが自身の担当カットをSNSで細かに発表していることだ。スタジオ制作アニメは、基本的にかなり詳しく見ない限り監督と脚本家、演出がエンドクレジットの中で目につきやすい。30分アニメを一本作るだけで細かく場面ごとに作業が分担されている、その制作システムも割愛される背景にはあると思うが、逆に『チェンソーマン』はその細かい分担が可視化されることによって、個人の労働と功績を賞賛しやすくなるだけにとどまらず、アニメの制作過程を一般的に周知させる意義を感じる。この人の原画、他の作品でも観たけどよかったな。この人の色彩、好きだな。ああ、こうやってたくさんの人が関わって、アニメが作られているんだな、と。原画の写真への掲載許可があることも大きいのだろう。
監督の中山竜が演出をしていた『呪術廻戦』第19話でもお馴染み、 “ターザン”シークエンスが今回もヒルの悪魔の体を滑るデンジで表現されていた。彼が彼女に挑む「夢バトル」は、『チェンソーマン』における重要な要素の一つだが、そこに決着がつかないままデンジはアキの“コン”によって救われる。原作ではアキの手が漫画の枠の外から伸びている、秀逸な演出が印象的だったシーンだが、アニメでもその一瞬の凪と、直後のキツネの悪魔の迫力に圧倒させられた。