『ちむどんどん』感動の名シーンを振り返る 全125話を貫く“幸せ”というキーワード

『ちむどんどん』感動の名シーンを振り返る

 悲観に流されそうになった際に、尽くその人間に手を差し伸べてきたのは「アッラ・フォンターナ」の料理長・二ツ橋(髙嶋政伸)だろう。一度はオーナーの房子(原田美枝子)はじめスタッフ全員を裏切った矢作(井之脇海)に「あなたが悪い人間でないことは、オーナーをはじめ、みんなよく知っています。だけど、あなたは料理人として道を誤り、信頼を失ってしまった」と人格を否定するのではなく、その行為だけを切り離して事実を伝えていた。

『ちむどんどん』

「その重たい荷物は、あなたが料理人を続けていく限り、ずっと背負い続けなければなりません。その覚悟を持てるなら、いつかきっと失った信頼を、取り戻せるはずです」

 この厳しくも愛情に溢れた二ツ橋の叱咤激励は、今後も矢作が投げやりな気分に引っ張られそうになった際に、意志の力を呼び起こしてくれる灯火となるだろう。

 かつて飲食店経営に乗り出し失敗した過去がある二ツ橋だからこそ、矢作だけでなく沖縄料理店をオープンするもなかなかうまくいかない暢子にも、根本的に大切なことを説得力を持って伝えられたのだろう。

「うまくいかない時は、たとえ悔しくても悲しくても辞めてもいいんです。一度止まって休んでもいいんです。あなたは飲食店で成功するために生きているわけではありません。幸せになるために生きてるんです」

 夢に向かう道のりの中でつまづいたり立ち行かなくなった時には、勇気を持って引き返したり、立ち止まることも必要だ。二ツ橋は、ワクワクしなくなってしまった道をただひたすら盲目的に走り続けることの危険性を説いた。

 “幸せ”というのは予め決められた場所にあるゴールではなく、夢に向かう道中である。だからこそいくらだって軌道修正可能で、その道のりは実は無数に広がっている。本作に登場する不器用で荒削りなキャラクターたちが、そのことを実直に体当たりで見せ続けてくれた、そんな半年間だったように思える。

■放送情報
連続テレビ小説『ちむどんどん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
主演:黒島結菜
作:羽原大介
語り:ジョン・カビラ
沖縄ことば指導:藤木勇人
フードコーディネート:吉岡秀治、吉岡知子
制作統括:小林大児、藤並英樹
プロデューサー:松田恭典
展開プロデューサー:川口俊介
演出:木村隆文、松園武大、中野亮平ほか
写真提供=NHK

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