のん×門脇麦×大島優子でスピンオフ作品も映画化 今こそ観たい『スカイハイ』の魅力

 『スカイハイ』の面白さを紐解くと、まず亡くなって怨みの門にやってくる人たちは死んだ記憶がなく、自分は誰になぜ殺されたのかを遡る推理ミステリーだということ。遡る中で事件の真相だけではなく、周りからどう思われていたのか自分を知っていく。相手に裏切られることもあれば、実は自分が裏切るような行動をしていたりと様々。2000年代は『恨みや本舗』や『地獄少女』など復讐ものが流行った時代だが、他の作品との違いを強いて挙げるなら、代行ではなく自らが復讐し、3つの選択肢があることで恨みをはらさないパターンもあること。

 例えばパート2の第4話「夢」では、代表を争うマラソン選手のライバルが火災に巻き込まれ助けに行くも負傷し、動けなくなった彼女をライバルはあえて見殺しにする。それだけでなく彼女を蔑視した言動からも恨み殺すことを考えるが、どうしても勝ちたいというライバルの真剣さに胸を打たれ、もう一度自分のために走りたいと思い天国へ旅立つ。

 逆に、女優の復讐物語であるパート2の第2話「バロック」では、年齢的に過渡期な女優が付き人に殺され役を奪われる。現実を知った女優は再生の道を一度決断したが、映画のクランクアップまで見届けることを決め、本番撮影中に幽霊として現れ、罪を告白しなさいと怯えさせるも、霊と言い争うことで演技が下手だった付き人が迫真の名演技を見せてしまう。一見これは現世にやり残した元付き人への演技指導だと思わせるが、「あなたはもう終わってるじゃない」と言われた瞬間呪い殺してしまう。その理由は嫉妬なのか「あの子の芝居がよく見えたから」と最後まで女優としてあり続け、地獄を選ぶというパターンも。よくありそうな復讐のテーマに、そうした人間の複雑な心理を丁寧に描き、恨みのその先にある答えをじっくりと考えさせる。むしろ死者より、殺人犯にしろ、娘を亡くした家族にしろ、現世に残された人たちが何を考え、どう生きるのか、そこがこのドラマの1番の醍醐味であり、視聴者も自分の生き方を振り返りたくなる。

 おそらく『天間荘の三姉妹』でも臨死状態になった記憶や、姉妹だということも最初は知らず、徐々に自分の置かれている状況や過去の真実が分かってくる展開だと予想される。公式の紹介文で「ひとの生死や魂、そして家族や近しい人たちとの繋がりという、決して他人事ではないテーマを通して日常に寄り添う姿を描く作品」と謳っている。予告編を観る限り、『スカイハイ』の暗く殺伐としたダークなイメージではなく、海が綺麗で静かな印象。人生の休暇のようであり、一見朝ドラのような美しい港町のドラマだが、この物語には大きな真実が隠されている。天国のような平穏な世界だからこそ死を連想させる不安。なぜ腹違いの家族がこの街で働いているのか、なぜ『スカイハイ』のスピンオフなのか、なぜのんが主役なのか。

 前述したように、『スカイハイ』は単なる復讐ものではなく、死んだ主人公の決断以上に、現世に残った人たちに何を伝え、どう思って生きていくのかを問う物語。現代はSNS文化が繁栄し、人の本音も表に出やすくなった昨今、以前にも増して心に傷を負った人が増えている時代だからこそ、今作のようなテーマのスピンオフが誕生し、時代はイズコを求めているのかもしれない。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる