なぜお笑い芸人を描く作品が増えた? 取り巻く環境の変化と“ドラマな人生”の面白さ

 実在のお笑い芸人をモデルとしたドラマや映画も増えている。その中でも最近、『浅草キッド』(2021年/Netflix)が大きな話題となった。原作は、ビートたけしが自らをモデルとした半自伝的小説。過去にも何度か映像化されてきたが、劇団ひとりの脚本・監督による映画化はその決定版。さすがのNetflix制作で昭和40年代の浅草を再現したセットやVFXには驚かされたし、大泉洋と柳楽優弥の好演もあって、実在のビートたけしの師匠である深見千三郎とビートたけしの熱い師弟関係に涙した人も多いだろう。

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「劇団ひとり」という名前を聴いて、どういう姿を思い浮かべるだろうか?  最も多いのはバラエティ番組でのタレントとしての姿だろう…

 こうしたお笑い芸人を題材としたドラマはなぜ、増えているのか。

 それは、お笑い芸人には分かりやすいドラマ性があるのが大きいだろう。どんなお笑い芸人でも、最初から売れることは無く、下積み時代があり、様々な努力と紆余曲折を経て、ごく限られた人だけが売れる。売れた後でも、何もせずに安定することは無く、毎日、休み無く働き続ける人が多い。分かりやすい起承転結があり、視聴者の共感を呼ぶ努力や苦悩も描きやすい。かつては、そうした努力や苦悩について語ることを憚られる風潮があったようにも思えるが、最近では、『ゴッドタン』(テレビ東京ほか)や『あちこちオードリー』(テレビ東京ほか)、『やすとものいたって真剣です』(ABCテレビ)などのバラエティ番組でも、お笑い芸人の内面について、自ら語る場も増えているし、お笑い芸人のメンタル問題について語られることも多くなっている。2019年からは、『M-1グランプリ』のドキュメンタリー番組として『M-1グランプリ アナザーストーリー』が製作され、感動的な裏側が毎年、話題となっている。

 そうした流れの一つが、お笑い芸人を題材としたドラマ製作でもあるのだろう。

 テレビを観る人にとって、お笑い芸人という存在が非常に身近であるということも大きいだろう。今や、どの時間帯においてもお笑い芸人が出ていない番組を見つけるのが難しいほど、様々なタイプの番組にお笑い芸人が出演している。また、「笑い」という要素が、「感動」「恐怖」などと同等に、ドラマを継続して見させるのに大きな役割を果たしていることも、ドラマの題材としてお笑い芸人が扱われる理由の一つかもしれない。

 7月から、昨年の『M-1グランプリ』で優勝した錦鯉の2人をモデルとしたドラマ『泳げ!ニシキゴイ』が、情報番組『ZIP!』(日本テレビ系)内の5分ドラマとして放送された。SixTONES 森本慎太郎が演じる長谷川雅紀と、渡辺大知が演じる渡辺隆を見ることで、錦鯉の2人自身に愛着を持った人も多いだろう。

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 そして、10月28日からは、SixTONES ジェシーと市川猿之助が漫才コンビを演じるドラマ『最初はパー』(テレビ朝日系)が始まる。秋元康が企画・脚本を担っていることもさることながら、総合監修に『ゴッドタン』『あちこちオードリー』などのプロデューサーを務める佐久間宣行が入っていることでも、お笑いファンの間では話題となっている。お笑いのプロとも言える佐久間宣行監修のネタがどれだけ笑えるものになるのか、今から楽しみだ。

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■配信情報
Netflix映画『浅草キッド』
Netflixにて全世界独占配信
原作:ビートたけし『浅草キッド』
監督・脚本:劇団ひとり
出演:大泉洋、柳楽優弥、門脇麦、土屋伸之、中島歩、古澤裕介、小牧那凪、大島蓉子、尾上寛之、風間杜夫、鈴木保奈美
音楽:大間々昂
制作担当:桑原学
エグゼクティブ・プロデューサー:高橋信一(Netflix コンテンツ・アクイジション部門ディレクター)
プロデューサー:有重陽一(日活株式会社 シニア・プロデューサー)、深津智男(ジャンゴフィルム)
企画・製作:Netflix
制作プロダクション:日活・ジャンゴフィルム

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