中川大志の畠山重忠を目に焼き付けろ! 若手屈指の“時代劇俳優”としての凄さ

 いよいよ最期のときが近づいている。

 魅力的な登場人物が次々と退場していくことでも話題の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK総合)。「武士の鑑」として高い人気を誇る畠山重忠もついに最後の花道を渡ろうとしている。

 演じるのは中川大志。その退場を惜しむ声とともに、眉目秀麗な坂東武者がいかなる散りざまを演じるかで、ファンの話題は持ちきりだ。なぜ畠山重忠はここまで愛されたのか。俳優・中川大志の歩みとともに振り返りたい。

イケメン演技からコメディまで多彩な振り幅を発揮

 小学5年生で事務所に所属。2009年に子役デビューを果たした中川大志が最初に世間の耳目を集めたのは、2011年放送の大ヒットドラマ『家政婦のミタ』(日本テレビ系)だった。中学2年生の長男を演じ、思春期特有の心の揺れをナイーブに表現してみせた。その後も『GTO』(カンテレ・フジテレビ系)では女子からいじめられる気の小さい男子高生、『夜行観覧車』(TBS系)では父からの過度なプレッシャーに心を壊す次男を演じるなど、キャリア初期から繊細さが求められる役を得意としてきた。

 子役出身は子役イメージから脱するのが難しいと言われるが、中川大志は『水球ヤンキース』(フジテレビ系)、『地獄先生ぬ〜べ〜』(日本テレビ系)などの学園ドラマや、『きょうのキラ君』、『ReLIFE リライフ』などの“キラキラ映画”に出演を重ねることで、スムーズな移行に成功。将来有望な若手イケメン俳優の1人に名を連ね、『花のち晴れ〜花男 Next Season〜』(TBS系)では平野紫耀と人気を二分した。

若手世代きっての実力派! 中川大志、“いくえみ男子”を体現する芝居力

現在放送中のドラマ『G線上のあなたと私』(TBS系)で、主人公・也映子(波瑠)が大人のバイオリン教室で出会う、恋愛に不器用なイケ…

 現時点での現代劇のベストアクトは『G線上のあなたと私』(TBS系)の加瀬理人を挙げたい。兄の元婚約者に報われない恋心を寄せる眼差しはせつなさと憂いを含み、それでいて女心がわかっていないところを也映子(波瑠)や幸恵(松下由樹)に指摘されて動揺するさまは愛らしくてコミカルだった。終盤では、也映子との初々しくて不器用な年の差恋愛をぎこちなさとまっすぐさが溶け合ったような演技で体現。口は悪いけど優しい理人くんの面影は今もファンの心に強く残っている。

 また、中川大志のイメージに強い影響を与えたという点では、auのCMの“細杉くん”も忘れてはならない。インパクト抜群のロン毛とクセの強すぎるキャラクターで爽やかイケメンから見事な脱皮を図った。こうした振り切った演技は『LIFE!〜人生に捧げるコント〜』(NHK総合)で培ったものも大きいだろう。

 中川大志は持ち前の真面目さ、品の良さを活かしながら、正統派の役どころを押さえつつ、真面目な人が与えられたものをとことん真面目にやり切ることで生まれるおかしみを武器に、コメディ路線でも資質を開花させた。

大河ドラマで築き上げた時代劇俳優としての道

 そして、中川大志のキャリアを語る上で外せないのが、時代劇俳優としての道のりだ。最初に大河ドラマに出演したのは、2011年の『江〜姫たちの戦国〜』(NHK総合)。翌年の『平清盛』(NHK総合)では“未来の鎌倉殿”こと源頼朝の少年時代を演じた。

 特筆すべきは、殿上始の儀の場面。そこで初めて平清盛(松山ケンイチ)と相対した頼朝は、その存在感に圧倒され、清盛に供する酒をこぼしてしまう。「やはり最も強き武士は平氏じゃ。そなたのような弱き者を抱えた源氏とは違う」と挑発され、思わず怒りの眼差しを向ける頼朝。けれどそんな自分を見て微笑む清盛に、敵意だけではない様々な感情を感じ取ってしまう。的確な台本読解力とアウトプットが求められる難しい場面を、瞳いっぱいにたたえた悔し涙と、清盛に吸い寄せられたような表情で演じ、清盛と源義朝(玉木宏)の間に流れる友情に似たライバル関係に厚みをもたらした。

 さらに、3度目の大河ドラマとなる『真田丸』(NHK総合)で三谷幸喜作品に初挑戦。豊臣秀頼の野心と血気を凛々しく演じ、母親の言いなりだった頼りない2代目という世間のイメージを大きく覆した。肌脱ぎで弓を引く姿は所作も含めて美しく、大物の風格十分。「豊臣秀頼である」と名乗りをあげ、家康(内野聖陽)を圧倒する場面は、怖いもの知らずの笑みで視聴者を沸かせ、「今年の大坂の陣は勝てる気がする」とネットでも大評判をとった。

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