『プリズム』最終回が放った色とりどりの光 杉咲花×藤原季節×森山未來の名演に寄せて

 ついに迎えた『プリズム』(NHK総合)最終話。またひとつ、良質なドラマが終わってしまった。

 私たちはドラマに限らず、常に祭りのあとの寂しさや虚しさみたいなものと向き合っている。誰もが一度は「この時間が止まればいいのに」と願ったことがあるはず。そんな終わりを恐れる私たちにお構いなく、時は進んでいく。なんて寂しい、だけど本作は変化を受け入れた先にある新しい景色を最後に見せてくれた。

 「きれいだと感じるものをきれいなまま閉じ込められたらいいのに」という思いから、テラリウムづくりを始めた皐月(杉咲花)。小さなガラスの世界に、皐月は父・耕太郎(吉田栄作)と母・梨沙子(若村麻由美)と幸せに暮らした“庭”を表現した。

 まるで、その中に一緒に閉じ込められてしまったかのような皐月を外の世界に連れ出したのは陸(藤原季節)だった。耕太郎のパートナーである信爾(岡田義徳)と皐月を引き合わせ、自身が手がけるリガーデンプロジェクトに引き入れた彼の強引さがすでに懐かしい。あの頃、二人は正反対のように思えたが、実はとても似ていた。

 陸と別れた皐月は、プロジェクトへの融資を打ち切った朔治(矢島健一)を説得しにいく。例のテラリウムを抱えて。それは陸もまた、実母の死により一度は枯れてしまった家族の“庭”をガーデンミュージアムで生き返らせようとしているからだ。今思えば、陸が皐月のテラリウムに惹かれたのはどこかで同じ思いに気づいていたからではないだろうか。

 きれいなものをきれいなままで。不変への憧れが皐月と陸を引き合わせた。だが、陸がかつて強く惹かれ合った悠磨(森山未來)の存在が二人の関係性を早々に変化させていく。当初より、柔軟で自然体な人物として描かれてきた悠磨。その魅力は、この人にはかなわないと皐月に思わせるには十分だった。

 一方で、回を追うごとに彼の弱さも浮かび上がってきたのも印象的だ。何かが変化すること、それによって傷つくことを恐れているのは悠磨も同じ。「植物の前では、謙虚な気持ちにならなきゃいけない。誰にも知られずに気持ちよく生きているものを人前にさらすのが俺たちの仕事なんだから」という、陸に授けた教えにもそれは隠されている。

 悠磨は、誰にも知られず気持ちよく生きている植物に、セクシャルマイノリティである自分を重ねていたのだろう。陸と出会わなければ、二人の関係性が誰にも知られることがなければ、自分も愛する陸も傷つくことはなかったかもしれない。その後悔が悠磨を自分の世界に閉じ込めた。結局はみんな似た者同士なのである。

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