ゲスト俳優を輝かせる新井順子P×塚原あゆ子監督 『石子と羽男』『MIU404』などから考察

 ドラマのオンエアが終わっても、心の中に生き続けるキャラクターたちがいる。あの主人公が今、この時を生きているとしたらどうしただろうなどと思いを馳せ、懐かしく思ったり、現実を生きる自分自身を奮起させてみたり……。

 とりわけ『アンナチュラル』(TBS系)や『MIU404』(TBS系)、そして現在放送中の金曜ドラマ『石子と羽男ーそんなコトで訴えます?ー』(TBS系)へと続く新井順子プロデューサーと塚原あゆ子監督がタッグを組んだ1話完結形式のオリジナル作品は、そうした気分にさせてくれるのだ。それはメインキャラクターのみならず、各話で登場したゲスト俳優が演じた役柄であることも珍しくない。

 『石子と羽男』でも、2021年に本格的に女優デビューした生見愛瑠や、本作が初のドラマ初出演作となる片岡凜など、これからが楽しみなニューフェイスたちもしっかりとその存在感を光らせている。なぜ新井P×塚原監督作品で登場するゲスト俳優は、これほど印象深く私たちの心に映るのだろうか。

ゲスト俳優が演じる“私だったかもしれない”物語

 例えば、『アンナチュラル』の第5話で登場した泉澤祐希が演じたのは、将来を約束した恋人を失った鈴木巧だ。当初、恋人の死因は自殺だと見られたが納得がいかずUDIラボに依頼。真相を知り、思わず真犯人に報復してしまうという役どころだった。

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「考えたことがあるか? 永遠に答えが出ない問いを繰り返す人生。いま、結論を出さなければ、もう二度とこの人物がどうして死んだのかを…

 また『MIU404』の第2話では松下洸平が、ハウスクリーニング会社で働く真面目な社員・加々見崇として登場。ある日、加々見は上司の遺体を発見し、殺人容疑をかけられてしまうのだが、無実を証明しようと通りすがりの夫婦を脅して車中に立てこもる。そして、誰もが思わぬ結末へと走り抜ける役を好演した。

 先述した生見は『石子と羽男』の第3話で姉と2人で暮らす堂前一奈を熱演。電動キックボードで衝突し、救護義務を果たしたにも関わらず、ひき逃げの容疑をかけられてしまう涙の演技で話題を呼んだ。そして片岡は繁華街に居座り、たった1人の親友と肩を寄せ合うように生きる家出少女・川瀬ひな役を演じて、ドラマデビューを飾る。大怪我をした友人を思い、石子(有村架純)&羽男(中村倫也)と共に現状を打破しようと奔走する役柄だった。
いずれのキャラクターも、ある日突然事件の当事者となってしまった人たち。それぞれの背景は違えど、慎ましくとも平和に生きたいと願う“普通”の人たちとも言える。ささやかな幸せを心の燃料に必死に毎日を生きる、そんな普通の人であっても不慮の事故や誰かの悪意に巻き込まれる可能性があるということ。それはドラマを見ている私たち視聴者1人ひとりにも言える。

 さらに、法律の改正などこれから世の中が変わっていくタイミングで、旬の話題を積極的に取り入れていく。テレビドラマというすぐに世相を反映できるコンテンツである特性をフル活用し、「明日は我が身」と自分ごとにとらえざるを得ないところへと視聴者を誘う。そのスピード感と潔さは「観たいものを作る」を信条とする新井Pらしい作り手としての気概だ。

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