『NICE FLIGHT!』が与えてくれた“希望” 玉森裕太と中村アンの“思い切りのいいキス”に感動

 つらい経験や悲しい過去は、必ずしもマイナスに作用するわけではない。私たちには、どんなこともプラスに塗り替えていける力が備わっている。『NICE FLIGHT!』(テレビ朝日系)は、そんな“希望”を感じさせてくれる作品だった。

 全8話を通して、いちばん変化したのは真夢(中村アン)だろう。最初は、仏頂面で、とにかく無駄を嫌っていた彼女。ひとりでも生きていける強さを持ってしまっているがゆえに、他人に頼ることもできなかった。

 そんな真夢が、“現実と非現実の乗り継ぎ地”である空港で、まっすぐな粋(玉森裕太)と出会った。そこから、すべての景色が180度変わっていく。

 17年前、母を待ち続けた羽田空港の展望デッキ。今は、粋との良き思い出の場所になったが、母を恨んだ日もあっただろう。幼い頃から、「迎えに来るからね」と言い聞かされ、そのたびに彼女は空を見上げてきた。それなのに、「どうして? どうして?」と心のなかで葛藤を抱いたこともあったはずだ。

 それでも、真夢は優しいから。育ててくれた祖父に心配をかけたくなくて、平気なふりをしていたのかもしれない。だから、なのだろうか。粋と恋人になっても、つい強がってしまうのは。

 大人になると、「これ以上は踏み込まない方がいいかな?」と先回りして、一歩引いてしまうことがある。だが、粋はどんな“壁”も許さない。ある意味で、子どものように純粋な感覚を持っているのだろう。

 だからこそ、真夢のかたくなな心を開くことができたのかもしれない。一歩間違えれば、「しつこいよ!」となってしまう可能性もあるだけに、まさにベストカップルといった感じだ。どんなに壁を作っても、それを乗り越えてきてくれる安心感が、粋への信頼につながっていたのだと思う。

 真夢の呪縛も解き放たれ、これで一件落着……といきたいところだったが、最終話では粋の身にピンチが。着陸寸前に、海外の不慣れなチャーター機が滑走路に誤侵入するというトラブル。粋と管制官の冷静な判断で、最悪な事態は回避できたが、粋のなかに恐怖心が芽生えてしまう。そんな時、声を掛けたのは、無口な機長・村井(丸山智己)だった。

「飛ぶのをやめるな。空の怖さを知ってるお前が飛ばなくて、誰が飛ぶんだ」

 この言葉に、本作が一貫して伝えてきたメッセージが詰まっているように感じる。つらい経験をしたとしても、それをプラスに変えていけばいい。真夢が、大嫌いだった展望デッキを、幸せな場所に塗り替えたように。過去は変えられないけれど、未来は私たちの考え方ひとつで、どんな色にも染めていけるのだから。

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