藤間爽子、『ちむどんどん』で重要な存在に? 風格と技量で吹かせる新たな風

 これからラストスパートに入っていこうかというところの『ちむどんどん』(NHK総合)において、重要なポジションでの登場を果たした藤間爽子。黒島結菜演じるヒロイン・暢子が次なるステップへと進むのに、ひいては本作がさらに前進するために、彼女は欠かせぬ存在となるのではないだろうか。

 藤間が演じるのは、暢子の料理の道の先輩である矢作知洋(井之脇海)の妻・佳代である。矢作といえば、「19歳のときに結婚した」という事実が多くの視聴者を驚かせたものだが、その妻が登場することはおろか、劇中で語られることすらなかった。謎に包まれた存在だったのだ。

 ヒロインを囲むいちキャラクターの配偶者を“謎に包まれた存在”などと称するのはおかしなことかもしれないが、彼女はこれからフォーカスすべき存在であろう。なぜなら矢作は、料理の才能と大きな野心を秘めながら、長年勤めた「アッラ・フォンターナ」の仕事に嫌気がさして不意に姿を消し、しばらくして自分の店に失敗して借金を抱えた彼は、再び「アッラ・フォンターナ」にやってきて退職金を要求、さらには深夜に空き巣に入るほどの落ちぶれっぷりを披露した。今度こそ完全に『ちむどんどん』の世界から退場したかと思いきや、なんと次は“食い逃げ”をして捕まっているではないか……。暢子の驚きは計り知れない。彼女の兄である“ニーニー”こと比嘉賢秀(竜星涼)に負けず劣らずのダメっぷり。重要なのはこの矢作の変化のすぐそばに、妻・佳代の存在があったということだ。彼女は何を思い、どんな人生を歩んできたのだろう。

 『ちむどんどん』への藤間の登場に関する情報が発表されると、たちまち大きな話題となった。おそらく矢作は今後の超重要人物だ。朝ドラでは重要かと思われたキャラクターがあっさりと退場してしまい、そのまま戻ってこない場合が多々あるが、矢作は再々登場である。これはもう完全に、彼がこれから超重要なキャラクターへとなっていくことの証だろう。自分の店をオープンさせる暢子にとって、矢作は物語の展開を左右するカギを握っているはずだ。そんな彼の波乱万丈な人生をともに歩みながらも、語られることはなく、謎めいた存在であり続けた妻の佳代。彼女が藤間爽子という俳優の身体を介して姿を見せたとき、分かっていながらもそこには大きな驚きがあった。藤間がセリフを口にすることなく、ただ黒島の横を通り抜けていくだけでもだ。

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