“SNS特攻”の台湾ホラー『呪詛』  NetflixからTwitterへ拡散する恐怖と呪い

 素直に白状すると、筆者はホラー映画が大の苦手だ。連続殺人鬼が鼻持ちならない若者を殺すやつや、殺人ピラニアがアホな若者を喰い殺す映画は大大大好きなのだが、幽霊が出るようなオカルトホラーは如何ともしがたい。うっかり観ようものならその日の夜は明りを点けっぱなしにしながら寝ることになる。真夏であろうとも布団にくるまって眠る。というわけでホラー映画を観ると毎度のことながら電気代を無駄にするはめになるのだが、この夏新たに電気代を無駄にさせてくれた最恐のホラー映画が現れた。そう、既にSNS上でも話題沸騰の台湾ホラー『呪詛』である。

 ホーホッシオンイーシーセンウーマ。なにやらTwitterでわけのわからないことを呟いている人を一度は見かけたことがあるのではないだろうか。この一見意味をなさない文字列を連続で呟くのは常軌を逸しているし、わけがわからない。この文字列は、Netflixで配信された台湾ホラー『呪詛』に出てくる呪文だ。主人公の女性が「娘を救うためにこの呪文を唱えてほしい」とカメラに向かって呼びかける。それが「火佛修一心薩嘸哞」………ホーホッシオンイーシーセンウーマだ。

 本作は7月8日よりNetflixで配信されたケヴィン・コー監督のホラー映画。「台湾史上最も怖い」という触れ込みとともに配信され、実際その怖さでNetflixのランキングでも連日1位を獲得した。主人公のリー・ルオナン(ツァイ・ガンユエン)が娘との生活を綴ったファウンド・フッテージ型のホラー映画であり、娘の身の回りで起こる異変と、過去で主人公が破った禁忌の様子が交互に映し出される。

 「実際どれくらい怖いの?」と思われる人もいるだろう。あくまで怖がりの主観的な意見を述べさせてもらうと、めちゃくちゃ怖い。冒頭に述べた通り夜通し電気を点けるはめになったし、今でも時折目をつぶると『呪詛』のワンシーンが目に浮かんで身震いするはめになる。シャワーを浴びている時とか最悪だ。そしてお察しの通り、Twitterでホーホッシオンイーシーセンウーマをやたらと唱えている怪集団のひとりだ。本作の恐ろしいところは、あらゆるホラージャンルの良いとこどりをしていることだろう。インターネット上では嫌悪とともに語られるジャンプスケアだが、個人的意見を述べさせてもらうと別段苦手ということはない。なぜならじわじわ系だろうとジャンプスケアだろうと死ぬほど怖いからだ。その点『呪詛』はJホラーのようなじわじわ系とジャンプスケアの良いとこどりのような恐怖演出だ。どっちが苦手、などということを気にする必要はない。ケヴィン・コー監督のサービス精神に泣けてくる。

関連記事