蓮佛美沙子、初共演の松田龍平の“謎”は解けず? 『鵜頭川村事件』で追求した不穏さ

蓮佛美沙子が『鵜頭川村事件』で感じた不穏さ

 松田龍平と『22年目の告白 ―私が殺人犯です―』『AI崩壊』などの入江悠監督が11年ぶりとなる再タッグで、WOWOW初のパニックスリラーに挑んだ。映画化された『死刑にいたる病』も話題を集めたばかりの作家・櫛木理宇の同名小説を、大胆に脚色した『連続ドラマW 鵜頭川村事件』だ。

 失踪した妻・仁美を捜して、仁美の故郷・鵜頭川村を訪れた医師の岩森(松田龍平)。伝統の祭りを控え活気づく村だったが、ほどなく集中豪雨が襲い、村は孤立してしまう。過酷な状況下で人々が追い詰められていく本作で、岩森の失踪した妻・仁美と、その双子の妹・有美の2役を演じた蓮佛美沙子にインタビュー。

 2006年にデビューし、翌年には『転校生 さよなら あなた』で映画初主演を果たした蓮佛。その後もドラマ『七瀬ふたたび』(NHK総合)、『37.5℃の涙』(TBS系)、映画『鋼の錬金術師』シリーズ、今年もTBS日曜劇場『マイファミリー』への出演など、活躍の続く蓮佛に、長野でのオールロケを行った本作ならではの撮影の秘話や、本作では“荒ぶる姿”が見られるという、初共演となった松田の印象、さらに演技に向かう際のスタイルを聞いた。

徹底して不穏さを追求した“画”

――入江監督によるパニックスリラーです。

蓮佛美沙子(以下、蓮佛):こうしたジャンルへの経験はありませんでしたし、入江監督とご一緒できるといことで、脚本を読む前からすごくワクワクしていました。実際に読んでも、私の演じる仁美の失踪から始まり、嵐によって村が孤立したと思ったら、連続殺人が発生し村中が不安に覆われていく、次から次へといろんなことが起こっていくスピード感に魅了されました。それを幅広い作品を撮られている入江監督が、どう作られるのかとても楽しみでした。

――1話目から重厚な世界観と不穏な空気に圧倒されます。演じる側としても、あの空気に押しつぶされそうな瞬間はありませんでしたか?

蓮佛:ありました。というか、押しつぶされてました(苦笑)。私はたまに東京に戻れていましたが、長野で2カ月間オールロケで撮影させてもらったんです。すごく空気もキレイで素敵な場所でしたが、作品が作品なので息が詰まりました。閉塞感の中で生きてきた設定だったので、それこそ祟りというか、目に見えない何かに押しつぶされそうな感覚はずっとありました。

――本作ならではだなと現場で感じたことはありましたか?

蓮佛:美術が素晴らしかったんです。嵐が過ぎ去った後の話なので、荒れた土地を表現する必要がありました。本当にワンカットワンカット、映画のように時間をかけていきました。木の枝をはじめ、ひとつひとつの物の絶妙な配置を、スタッフさんが一丸となって作っていって、おどろおどろしい、何か嫌な、気味の悪い、どこか怖い“画”が出来上がっていきました。別に幽霊が出てくるとかではないのですが、ワンカットワンカットの不穏さへの追及が、パニックスリラーならではだと感じましたし、演じるうえでも助けられました。

松田龍平が醸す雰囲気の謎は最後まで解けず?

――松田龍平さんとの共演はいかがでしたか?

蓮佛:初めてご一緒させていただきました。作品を拝見していて、龍平さんにしか出せない唯一無二の空気感や、立ち振る舞いがすごく素敵だなと思っていたので、初日からずっと観察していました(笑)。「この方の独特な雰囲気は、どこから出てくるんだろう」と思いながら勝手に盗み見ていました。

――その結果分かったことはありましたか?

蓮佛:謎は最後まで解けませんでした。むしろより一層深まりました(笑)。ただ、龍平さんには感情をあらわにする印象があまりなかったのですが、今回は、怒鳴ったり叫んだりするシーンが結構あるんです。私が抱いていた、脚本を読んで思っていたイメージとは違う、新鮮な姿だったので、そこに触発された部分はありました。そうした、想像していたものとは違うものに現場で出会えたときというのは、相手が誰であっても楽しいし、乗っかりたい。それが、今回は“荒ぶる龍平さん”でした(笑)。ひとつの見どころです。

――確かに“荒ぶる龍平さん”は新鮮でした。松田さんご本人の印象はいかがでしたか?

蓮佛:想像の2倍喋る方でした(笑)。ミステリアスで寡黙な方なのかなと思っていたのですが、たくさん喋る方。壁がなくて、年齢や性別も関係なく、みなさんと平等にお話しされます。娘役の子とも、同じ目線で本気で言い合いしたりして。本当に分け隔てなくコミュニケーションを取られる方という印象でした。

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