【追悼】小林清志さんの役者魂はいつまでも消えない 大塚明夫へと継承された次元大介

 声優の小林清志さんの逝去が2022年8月9日に各メディアで報道された。亡くなったのは7月30日で死因は肺炎と報じられている。この訃報を受けて多くの吹替洋画愛好家とアニメファンが悲しみに包まれながら、追悼の言葉をネットに書き込んだ。

 小林清志さんの代表作といえば、半世紀も演じ続けた『ルパン三世』の次元大介役が有名だが、その『ルパン三世』のレギュラー出演も、番組が始まった頃は数ある仕事の中のひとつぐらいに思っていたという。もちろん、幅広い世代に親しまれているキャラクターとしては次元がもっともポピュラーだろうが、小林さんの長いキャリアの中では洋画、アニメともに膨大なキャラクターにも目を向けるべきだろう。

 アニメも実写ヒーローも全部ひっくるめて“テレビまんが”と呼ばれていた1960~1970年代は、アメリカのハンナ・バーベラ・プロダクション社が製作した子ども向けカートゥーンを、日本独特の吹き替えで活発に放送していた。その中でも1968年に日本で放送された『大魔王シャザーン』は、小林さんが主演したアニメの中で当時もっとも子どもたちに親しまれた作品だろう。指輪の精シャザーンが怪物退治をする勧善懲悪のストーリー、そして小林さんが声を演じるシャザーンの魔法のかけ声「パパラパー」は、ある年代の人にとって忘れられないフレーズでもある。

 そのシャザーンと同年に放送された『妖怪人間ベム』も、小林さんの声優人生を語る上では重要な作品だ。悪い妖怪を倒して徳を積むことで、いつかは人間になれるかもしれないと希望を抱きつつ、人間から迫害を受けて旅をする3人の妖怪人間。その家長的存在のベムの声を小林さんが演じた。人間たちに拒絶されながら、それでも人間のために戦う彼らの悲壮感溢れるドラマと、「真の人間らしさとは何か?」という普遍的なテーマから何度もリメイクされ、小林さんは実写ドラマ版とその劇場版(2011~2012年)及び、2度目のリメイクアニメの劇場版(2020年)に、それぞれナレーターとして参加して『ベム』との強い縁を感じさせた。

 小林さんの談話では、日本でもテレビ放送されていた海外西部劇ドラマ『ローハイド』の頃から洋画吹き替えの仕事を初めており(並行してジェリー・アンダーソン製作の海外人形劇にも声の出演)、同番組でクリント・イーストウッドの声を担当していた山田康雄さんの仕事ぶりを当時から知っていたという。小林さんが長年、吹き替えを担当した俳優としてはジェームズ・コバーンが有名だ。コバーンといえば小林清志、というぐらい吹き替えのイメージが定着し、テレビ放送用とビデオソフト用、分け隔てなくコバーンの声を吹き替えた。西部劇俳優総出演のオールスター映画『荒野の七人』には、ナイフ投げ名人のブリット役としてコバーンの吹き替えを担当。寡黙なキャラクターだが、ここ一番の台詞を発する時には抜群の存在感を発揮している。西部劇のスターといえばクリント・イーストウッドが有名だが、イーストウッドの吹き替えを専任していた山田康雄さんが死去した以降は、『トゥルー・クライム』、『スペース カウボーイ』など何作かの主演作で小林さんが吹き替えを引き継いだ。山田さんの持ち役だったイーストウッドを担当したことに触れて、小林さんは次のように回顧している。

「彼(山田)は息で喋るような人なんですよね、イーストウッドの時は。俺みたいに喉から声を出すタイプの役者じゃないんだ。あいつの声が耳についてね……何とか彼の特徴や近い音程で喋ろうと思って苦労しましたよ」。(※1)

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