『ベター・コール・ソウル』砂漠地帯のアルバカーキに涙雨が降る、慟哭のエピソード

 一方、ソウルは何の躊躇もなく末期ガンの投資家宅へ忍び込んでいた。案の定、家主は床に昏倒して起きる気配がない。ソウルは順調に事を進めるも、しかし外で待機するジェフ(パット・ヒーリー)が浮足立った。たまたま後ろに停車したパトカーに取り乱し、車を急発進。まんまと前の車両に激突してお縄となる。一分の隙もない本エピソードだが、この場面はフィッシュタコスにまつわるダイアログといい、とにかく可笑しい。

 もちろん、ソウルは万が一の事態も想定していた。留置所のジェフから電話を受けると、相変わらずの図太い法律アドバイスで彼を落ち着かせ、保釈金の支払いのため近親者であるマリオン(キャロル・バーネット)に出頭を依頼する。だが、この賢明な老女はシナボン店長にすぎないジーンの淀みない説明に疑惑を抱く(演じるキャロル・バーネットが素晴らしい)。彼女はジェフが買い与えたパソコンで“アルバカーキ 詐欺師”と検索すると、ジーン・タカヴィクこそソウル・グッドマンであることを突き止める。通報を阻もうと凄むソウルには今や老人たちに愛されたジミー・マッギルの面影はない。大きなメガネと口ひげはハイゼンベルクと名乗ったウォルター・ホワイトを彷彿とさせ、ジミーにもまた破滅の時が近づいていることを感じずにはいられないのである。

 ショーランナーであるヴィンス・ギリガン自らが監督、脚本を務めた今回は陰影に富んだ美しいモノクロ撮影、緩急自在の演出、完璧な脚本、そしてレイ・シーホーンの胸を締め付けるようなパフォーマンスによって『ベター・コール・ソウル』の到達点とも言うべきエピソードとなった。次回、最終回が第63話にあたり、『ブレイキング・バッド』の総エピソード数62を超える。14年に及ぶアルバカーキサーガが間もなく幕を下ろそうとしている。

■配信情報
『ベター・コール・ソウル』シーズン6
Netflixにて配信中
(c)Joe Pugliese/AMC/Sony Pictures Television

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