『チェンソーマン』戸谷菊之介、楠木ともりら、“生っぽさ”を持つ声優陣に高まる期待

 第1部が『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載され、第2部が現在『少年ジャンプ+』(集英社)にて連載中の『チェンソーマン』のTVアニメ新情報が、8月5日20時より始まった特番内で発表された。

 2020年12月14日にアニメ化が発表された際は、制作を『呪術廻戦』などで知られるスタジオMAPPAが手がけることだけがわかっていた。その後、2021年6月27日にティザーPVが公開されて以来、アニメに関する新情報は発表されず、もはやアニメ化が決定してから1年半ごしの声優発表&最新映像公開となる。昨年には10周年を迎えたスタジオMAPPAの多忙さは業界内でも屈指であり、2021〜2022年間にいくつもの作品を輩出していたため、この遅れは仕方ない。

 さらに、今回新たに発表された新映像はティザーPV以上に日常的なシーンやアクションシーンを捉えているもので、どのシーンでも一切の妥協がないことがわかるくらい、圧倒的な作画力を放っている。原作漫画も描き込みが細かいのが特徴的だが、もはや全てのシーンがこれほどのクオリティで作られているのであれば、MAPPAスタッフを心配してしまうレベル。まさに社運をかけた一作としての気合を感じる。

Chainsaw Man - Official 3rd Trailer / 『チェンソーマン』公式PV 第3弾

 さて、ついに発表された声優陣をおさらいしよう。デンジ役を演じるのは戸谷菊之介、マキマ役は楠木ともり、早川アキ役は坂田将吾、パワー役はファイルーズあいとなった。戸谷は18歳の時に2017年に開催されたソニー・ミュージックアーティスツ主催のオーディション「アニストテレス Vol.6」にて特別賞を受賞。その後、同事務所に所属し2018年にゲーム『ウインドボーイズ!』の清嶋桜晴役でデビューを果たして間もない、注目の新人声優だ。今回、アニメ『チェンソーマン』の監督を務める中山竜が、キャスティングにおいて一番重要視したのがデンジ役であり、特に“音”にこだわりを見せていたことを、本作で脚本を務める瀬古浩司が特番内で告白。まだ出演作の少ない戸谷を抜擢した理由を、中山は「デンジの声帯を持っていた」と答えたそうだ。

 マキマ役を務めることになった楠木は、戸谷の事務所の先輩でもある。もともと作品の中でもかなり重要な役割を担うキャラクターであるが故に、事前に声優の予想合戦が白熱していたが、楠木の演じるマキマは想像以上に優しく、丸い印象だ。しかし、その甘さの中に感じる冷酷さが逆に怖くもある。楠木は2017年の『エロマンガ先生』でデビュー。最近は『ワンダーエッグ・プライオリティ』青沼ねいる役や『先輩がうざい後輩の話』の五十嵐双葉役で知られ、『チェンソーマン』と同じ『ジャンプ+』作品の『阿波連さんははかれない』にも佐藤ハナコ役で出演していたことが記憶に新しい。ゲームやナレーションなど、アニメの仕事以外にも多岐に活躍している印象だ。

 早川アキ役の坂田はデンジ役の戸谷と同い年で、青二プロダクション所属。高校在学中から声優の仕事をしており、参加作品も数多いがネームドキャラが少ないことも受けて今回は大抜擢とも言える。一方で、アンネームドだからこそ1作品の中で複数の役に声を当てるなどの力量も。『ゾンビランドサガ リベンジ』ですでにMAPPAとは仕事をしている彼だが、発表されたティザーの中では早川アキらしい、冷静な声色が印象的だった。

 パワー役のファイルーズあいは、おそらく今最も人気が高まっている声優の1人だろう。2019年に初アフレコ作品『ダンベル何キロ持てる?』で主演を務めて注目を浴び、2020年には第14回声優アワードで新人女優賞を受賞した。根強いファンを誇る『トロピカル〜ジュ!プリキュア』では主役の夏海まなつ/キュアサマー役を、声優を志したきっかけの作品でもある『ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン』では主人公・空条徐倫役を射止めるなど、今かなり精力的に活動している。バラエティ番組への出演でも認知度は高く、演じるパワーのキャラクター性と声優のイメージはかなり一致していると思われる。

 今回発表された4名で印象的なのは、ほぼ新人&若手声優でメインキャストが構成されたことだ。平均年齢も若い。それぞれの役はオーディションを通して決まったようで(マキマ役の楠木はパワー役のオーディションにも参加していたと特番で明かした)、おそらく今回MAPPA側は相当声優を探しに探したのだろう。新人だからこそ、これまで演じてきた代表的なキャラクターのイメージや、先入観を抱かせない良さがある。これからの注目株を揃えた点でも、本作への本気度が窺えるのだ。監督は本作を実写的、写実的に演出することを常々語り、注力していると脚本の瀬古が明かしたが、それに伴いキャストの演技も“生っぽさ”が求められたとのこと。実際に作品の中でどのような表現がされているのか、今から待ち遠しさが募る。

関連記事