ディーン・フジオカが振り返る『パンドラの果実』の半年間 「人間は常に問われている」
歌詞を書くことで言語化
――小比類巻には警察官としての顔と家族を愛する顔の両方がありますが、両方の感覚を引き出しながら、小比類巻という役を演じる上で大切にしていたことがあれば聞かせてください。
ディーン:一番簡単な構造としては「科学犯罪対策室の室長というパブリックサーバント」と「家庭での父親、夫としての素の部分」という構図を作りました。中盤で、小比類巻が、妻を冷凍保存していることが明かされていく部分では、こういう決断をするに至ったという思考の流れを視聴者の方に体験してもらえるといいなと思いながら演じましたね。自分の中で思考を巡らせて、行ったり来たりしながらこういう答えにたどり着いたけれど、「あなただったらどうしますか?」と提示できたらいいなと。もう一つは娘との関係です。娘が誘拐されて最終的に8~10話で小比類巻が暴発して、仕事人としてはあるまじき行為をするのですが、これも娘を愛するがゆえの行動だというところで、常に問われている。善悪よりも奥深いところで問われているような感じになるといいなと思って。神と悪魔の対話みたいな感覚で、どちらも否定できないし、どちらも肯定しにくい。そういうところの感情を込めて作ったのが主題歌の「Apple」でした。この曲は、小比類巻を演じる上で自分の中で言語化できないような部分を表現した側面もありました。
――音楽作りが役を作る上で重要だった部分もあるのですね。
ディーン:歌詞を書くことにより自分の中で言語化できてなかったものが言語化されたり、サウンドで楽曲としてまとめたときに生まれる非言語的な部分での共鳴というか。もしくは自分で作ったものに対して共鳴して、それに反響した部分が、小比類巻の役を演じる上で役に立ったというのは結果としてありました。
――『パンドラの果実〜科学犯罪捜査ファイル〜』、『バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版』と立て続けにミステリー作品に関わられていますが、ミステリーはディーンさんにとって好きな題材になりますか?
ディーン:アクションが好きなので、その意味では『パンドラ』はすごく楽しくやらせてもらっていますし、『シャーロック』の劇場版の方でもアクションをやらせてもらいました。扱うテーマがどんなものであれ、それが物語になる以上そうなるべき理由みたいなものがあると思うんです。僕が演じる役を通して追体験できるような何かがあると思うので、逆に可能性を狭めたくないから、体験できる種類を狭めたりはしません。それをしてしまうともったいない感じがしますし、縁とか出会いを楽しむ感覚なので、あまり“謎解き”にこだわっていることはないです。ホラーはちょっと躊躇しちゃうかもしれないですけれど(笑)。
「水風呂に入りたい」
――忙しいスケジュールの中でルーティンになっていることがあれば教えてください。
ディーン:ストレッチ、睡眠……なかなか行けないですけれど水風呂に入りたいです。水シャワーとか、冷たい水を浴びたいですね。ライブツアーに出ているときには、毎回ライブ終わりに必ずサウナや交互浴を3セットやって、自分を落ち着かせてから寝ています。呼吸を荒くしていたら息が上がっていって鼓動も早くなる、深く呼吸したら心臓の鼓動も収まる。そういうのと同じで、体温をコントロールするのは直接的で手っ取り早いんです。自律神経を整えるというか、そのルーティンは効果的だなと思っています。
――2022年の夏、挑戦したいことがあれば教えてください。(※取材日は7月8日)
ディーン:『パンドラの果実』の撮影をしっかりやり遂げて……そのあとは(家族の住むインドネシアに)帰宅できたらなと思ってます。3年くらいずっとゴリゴリやっていたので、帰宅することが、ここからどういうふうに仕事をしていくかを考えるきっかけになるといいなと思っています。
――2022年の下半期の展望などがあれば聞かせてください。
ディーン:予定は組んだところで狂ったりもするものなので、あまり考えず全部仮スケジュールみたいな感覚でいるようにはしています。もちろん、やらないといけない準備はして、制作もし続けますが、激動の時代なので決めていても思い通りにはいかないよなと。この3年間は、皆さんそうだったんじゃないかな? 全員、予定が狂ったみたいな感じだったと思います。だから何があってもいいようにしっかり準備をした上で、反射神経の良さを心がけていて。自分がやらないといけないことを堅実にやっていきたいと思っています。
■配信情報
Huluオリジナル『パンドラの果実~科学犯罪捜査ファイル~』Season2
Huluにて、毎週土曜1話ずつ独占配信中(全6話)
出演:ディーン・フジオカ、岸井ゆきの、佐藤隆太、吉本実憂、西村和彦、本仮屋ユイカ、安藤政信、平山浩行、池内万作、弓削智久、板尾創路、石野真子、ユースケ・サンタマリア
原作:中村啓『SCIS 科学犯罪捜査班 天才科学者・最上友紀子の挑戦』(光文社文庫)
脚本:福田哲平、関久代、土井笑生
監督:羽住英一郎、長野晋也
音楽:菅野祐悟
制作:田中宏史、長澤一史
チーフプロデューサー:三上絵里子、茶ノ前香
プロデューサー:能勢荘志、尾上貴洋、古屋厚、小田切ありさ
制作協力:ロボット
制作プロダクション:日本テレビ
製作著作:HJホールディングス
(c)中村啓・光文社/HJ ホールディングス