『東京リベンジャーズ』実写化はなぜ大成功した? 北村匠海が観客とヤンキーの橋渡し役に

リベンジ相手は弱っちかった自分自身

 本作のタイトルには「リベンジャー(復讐者)」とある。タケミチは自分の人生に悔いを残している。タイムリープ能力によって、うだつの上がらない人生をやり直すチャンスを得たが、タケミチは誰かに復讐するために過去に戻るわけではない。というより、彼の人生を駄目にしたのは何よりも弱かった昔の自分なのだ。

 ヒナを助けるという明確な目標を持ったことで、彼は今度こそ人生をやり直してみせるという決意のもと、弱かった自分を克服していく。タイトルが示すリベンジの相手は、(一応、キヨマサという具体的な敵はいるが)何よりも「弱っちかった自分」なのだ。本作が多くの人の共感を得られるのもここが大きい。タイムリープ以外、特別な力を持たない取るに足らないタケミチが弱さを克服していく姿は素直に応援したくなる。自分もやればできるかもしれないという気分にさせてくれる。

生身の肉弾戦に実写ならではの迫力

 近年、マンガの実写映画化に対するまなざしは非常に厳しくなっているが、本作はうまく実写にアダプトできた好例と言えるだろう。ヤンキーマンガは現実的な世界を舞台にするため、実写化の例は80年代から存在するので、それなりにノウハウもある。タケミチ役の北村匠海、マイキー役の吉沢亮、ドラケン役の山田裕貴はじめ、役者も迫真の演技だったし、原作キャラクターの記号的特徴を上手く捉えていた。

 ヤンキーものには必ず肉弾戦の喧嘩シーンがある。肉体と肉体がぶつかり合う喧嘩シーンは、生身の人間だからこその迫力を持ち込める題材であるのも大きい。生身の身体と身体がぶつかり合う様をカメラで撮影できると、そこにはフィクションであっても嘘を超えた本物の迫力が宿る。吉沢亮などは身体能力も高いために、見事に迫力あるアクションを披露してくれる。この本物の肉体の迫力だけは、漫画やアニメと比較して実写が長けている点だ。ヤンキーものはマンガ原作であっても、実写ならではの魅力で勝負できる題材なのだ。

 血のりとはいえ、本物の肉体が流血している様は、見ていて痛々しいが、それだけ痛みへの恐怖を乗り越えた時の感動も大きくなる。マンガの良さを消さずに実写の良さで勝負することで成功を収めた稀有な作品だ。

■放送情報
映画『東京リベンジャーズ』
フジテレビ系『土曜プレミアム』にて、7月30日(土)21:00〜23:30放送 ※20分拡大
出演:北村匠海、山田裕貴、 杉野遥亮、今田美桜、 鈴木伸之、 眞栄田郷敦、 清水尋也、磯村勇斗、間宮祥太朗、吉沢亮
原作:和久井健『東京卍リベンジャーズ』(講談社『週刊少年マガジン』連載中)
監督:英勉
脚本:髙橋泉
(c)和久井健/講談社 (c)2020 映画「東京リベンジャーズ」製作委員会

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