中村獅童、“名刀の主”として『鎌倉殿の13人』を支えた品格 「梶原景時の変」で何を残すか

 ちなみに、『梶原平三誉石切』は、石(手水鉢)を真っ二つに切る名刀に対して、「名刀だけが素晴らしいのではなく、景時のように腕の立つ斬り手がいてこそ……」というセリフが印象に残る作品なのだが、この演目に呼応するように、『鎌倉殿の13人』の第7回「敵か、あるいは」で景時は北条義時(小栗旬)に、頼朝の御家人にならないかと言われた際に「刀は斬り手によって名刀にもなれば、鈍らにもなる。決めるのは斬り手の腕次第」という言葉を残している。

 『鎌倉殿の13人』の景時の言葉の背景には、景時が石橋山の敗戦で洞窟に隠れていた頼朝を見逃した理由と、義時と景時が実感した「天に守られている強運の持ち主、頼朝の不思議な力」がある。

 義時になぜ頼朝を助けたのかと聞かれた景時。彼は、大庭勢が目と鼻の先にいた頼朝に自分以外誰一人気づかないことに驚き、天に守られていると感じたと答えた。頼朝が挙兵した当初は平家方として戦ったものの、頼朝軍の勢いある巻き返しを目の当たりにして、源氏方についた。

 冷静沈着で計算高いように見えて、それだけではない正義感や忠誠心といった熱いものを秘めた景時。第28回の予告では、りく(宮沢りえ)に「これを機会に梶原を引きずりおろしてしまいましょ」と軽く言われているが、窮地に追い込まれて景時はどんな反応を見せるのか。名刀と斬り手が主従関係を表すのであれば、頼朝から頼家だけでなく、景時に仕えていた容赦なく何でも斬ってしまう“名刀・善児(梶原善)”がどんな斬り手のもとに行き、どんな仕事をするのか、そこも気になるところ。

 御家人同士の抗争はまだ始まったばかり。まずは「梶原景時の変」がどう描かれるのか。注目しよう。

■放送情報
『鎌倉殿の13人』
NHK総合にて、毎週日曜20:00~放送
BSプレミアム、BS4Kにて、毎週日曜18:00~放送
主演:小栗旬
脚本:三谷幸喜
制作統括:清水拓哉、尾崎裕和
演出:吉田照幸、末永創、保坂慶太、安藤大佑
プロデューサー:長谷知記、大越大士、吉岡和彦、川口俊介
写真提供=NHK

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