『ちむどんどん』暢子と和彦の完璧なキスシーン “第1章完結”とも言える大団円に

 これまで語られることのなかった優子(仲間由紀恵)と賢三(大森南朋)、さらに房子(原田美枝子)の過去、沖縄戦の悲惨さとその記憶、そして今を生き、伝えていくということが描かれた『ちむどんどん』(NHK総合)第15週「ウークイの夜」。そのラストでついに暢子(黒島結菜)と和彦(宮沢氷魚)が結ばれる。

 “朝ドラ受け”の『あさイチ』(NHK総合)にて博多大吉も思わず「今日最終回かなって、そんなエンディングを見せられた感じ」と口にするほど、見事なラスト。“第1章完結”と言っても過言ではない大団円だ。朝ドラとしては典型的な演出展開でもあるのだが、沖縄の美しく澄んだエメラルドグリーンの海とどこまでも広く青い空をバックにした、暢子と和彦のキスからのハグは、これまでのいざこざを忘れさせてしまうほどの画としての力がある。ずるい。

 鈴木奈穂子アナウンサーの「みんなでキスシーンを観るのは恥ずかしいですね」という一言を深読みすれば、朝ドラとしては久々のキスシーンでもある。コロナ禍以降での撮影ということもあり、『おかえりモネ』(NHK総合)、『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)では、キスシーンは存在しなかった。特に互いの距離が一つのテーマでもあった『おかえりモネ』は、手を握る、ハグをすることでさえも拍手を贈りたくなるくらいに、一つひとつの心理描写が丁寧に描かれていった作品だった。キスシーンとしては『おちょやん』(NHK総合)以来ということになるが、やはりここまで画になるキスシーンとなると近年の朝ドラでは意外となかった、逆に珍しい場面とも言える。

 ただ、博多華丸も口出しをしているように、プロポーズは暢子からだった。もちろんプロポーズは必ず男性からという決まりはない。しかし、かつてのパートナーである愛(飯豊まりえ)の方から次に進むことを切り出された和彦の優柔不断な性格を考慮すると、華丸の「言わせんじゃないよ、女性に。お前が言え」という辛辣な意見にも同感してしまう。

 その反面、見方を変えれば暢子からのプロポーズだったのには、「幸せになることを諦めない」という優子からの思いを受け取った暢子なりのアンサーとも捉えられる。自分は恋愛には向いていない、仕事一筋の人間だと勝手に諦めていた暢子の背中を「全部掴みなさい」と力強く押したのは、優子と同じく戦争の時代を生き抜いてきた房子だった。「過去を知ることが未来を生きるための第一歩」ーー沖縄戦の遺骨収集をする嘉手苅(津嘉山正種)に和彦が告げたセリフをふと思い出す。

■放送情報
連続テレビ小説『ちむどんどん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
主演:黒島結菜
作:羽原大介
語り:ジョン・カビラ
沖縄ことば指導:藤木勇人
フードコーディネート:吉岡秀治、吉岡知子
制作統括:小林大児、藤並英樹
プロデューサー:松田恭典
展開プロデューサー:川口俊介
演出:木村隆文、松園武大、中野亮平ほか
写真提供=NHK

関連記事