アニメ『Engage Kiss』は懐かしくて新しい ヤンデレ×ダメ主人公×強いヒロインの方程式

 アニメ『Engage Kiss』が、7月から放送中だ。本作は、『冴えない彼女の育てかた』(KADOKAWA)の作者・丸戸史明がシリーズ構成と脚本を務め、『デート・ア・ライブ』(KADOKAWA)などの挿絵を担当したイラストレーター・つなこがキャラクターデザインを務める強力な布陣。可愛らしいキャラクターはもちろん、ストーリーも魅力的な一作だ。

 本作は、太平洋に浮かぶメガフロート型の都市・ベイロンシティを舞台に、主人公・緒方シュウがキサラや夕桐アヤノとともに、平穏を脅かす悪魔と戦う、バトルあり三角関係ありの内容だ。恋愛要素を含みつつも女性キャラと一緒に戦うバトル系のアニメは多いが、本作は特にクセの強いキャラに惹かれてしまう。

 丸戸はこれまで『この青空に約束を—』、『WHITE ALBUM2』など、アニメ化もされた美少女ゲームのシナリオを数多く経験しただけあり、とにかくキャッチーなキャラ作りが秀逸。本作もキャラが立ちまくっている登場人物が多い。

 中でも、キサラは金欠のシュウの家に行っては料理を作る、という献身的なヒロインである。そんな主人公想いのキサラではあるが、せっかく料理を用意してシュウの帰宅を待っていたにもかかわらず、「ごめん、実は食べてきちゃって……」と言われると態度が急変。「そうだよね、仕方ないよね。私が勝手にやってることだし」と意気消沈しながら、「そういうあなたも私のことなんて忘れちゃうよね? 私なんて生きてる価値ないよね? 本当どうしようもないよね?」とぶつぶつネガティブな独り言を話し始める。ほかにも、シュウを抱きしめる際、「他の女の臭いがする」とつぶやくなど、今時珍しいガッツリな“ヤンデレ”っぷりは可愛らしいだけでなくどこか懐かしい。

 また、シュウの元カノ・アヤノは別れた今でも、生活能力のないシュウを気にかけている。アヤノ自身もまだシュウに未練があるのか、シュウとベタベタするキサラに対して面白くなさそうな態度を見せている。被害妄想からの独り言や独占欲が垣間見える言動など、キサラのヤンデレムーブを堪能したいため、アヤノの立ち居振る舞いにも注目したい。

 第1話、第2話ともに前半パートは、キサラやアヤノとのラブコメ的なやり取りが中心だった。ただ、後半パートは打って変わって、対悪魔とのSF要素満載のバトルがメイン。特に第1話は作品の方向性を示したかったのか、映画さながらの激しいバトルが展開された。

 バトルにおいて、ショウは“普段はダメダメだけどバトルになるとカッコ良くなる”的な主人公ではない。アヤノにフォローされたりキサラに守られたりなど、決して弱いわけではないが頼りなさが残る。ここ最近“主人公=最強”の作品が少なくない中、頼りない主人公が女性キャラに助けられながら戦う、というパターンは久しく、これまた懐かしさを覚える。

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