坂口健太郎×杏『競争の番人』第1話の脚色に今後も期待 新川帆立による原作との違いは?

 『元彼の遺言状』で第19回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞した注目の作家・新川帆立による『競争の番人』は、まさに連続ドラマになるために書かれたような小説だ。舞台は行政機関の中でもマイナーな存在である公正取引委員会、略して「公取」。企業活動を監視し取り締まる組織で、商売や競争の中でどうしても起きがちな不正を厳しくチェックし、企業への立ち入り検査も行う。独占や談合などのルール違反は許さない。つまりスポーツのレフェリー(審判)のような存在だと言えるだろう。

 新川帆立は、そんな知られざる公正取引委員会審査官の仕事ぶりを分かりやすくエンターテインメント性たっぷりに描き、単行本発売前からドラマ化が決定。月9枠で『競争の番人』(フジテレビ系)としてスタートした。月9は『イチケイのカラス』(フジテレビ系)もそうだったように “実は警察のように捜査をする”チームものが得意分野のひとつ。それだけに第1話はこなれた作りになっていた。まず、お役所のサイトによくあるような動画「公正取引委員会とは? 解説動画」から始め、組織の説明をすると同時に、審査官役の小池栄子と大倉孝二のゆるいやり取りで笑わせる。そのあと一転して警察と犯人のカーチェイスを展開し、杏の演じる白熊楓が警視庁捜査一課の刑事としてさっそうと登場した。

 原作との大きな違いは、まずヒロインの設定にある。原作での白熊はかつて警察官を目指していたものの事情があって断念し、公取に生え抜きで入ったという設定だった。しかし、ドラマの白熊はもともと刑事であり、捜査で失敗をしたために公取に出向させられてしまう。この設定変更には原作ファンなら賛否両論があるだろうが、それによって白熊がOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)というシステムによって公取の業務を体験していく過程を描くことができ、「公正取引委員会」とはどんな仕事をするところか、視聴者にとってもより分かりやすくなっていた。警察にいた白熊が公取の権限を古巣と比較し「弱すぎませんか? 公取」と驚くさまにもクスリとさせられた。

 白熊が東大法学部を主席で卒業したエリート官僚・小勝負勉(坂口健太郎)とコンビを組むことになるのは原作どおり。小勝負の設定も珍しい苗字も含めて小説と同じだが、ドラマでは白熊でなく小勝負が主人公になって、より個性的なキャラクターになっている。誰よりも頭が回る小勝負は立ち入り検査の際も単独行動し、オフィスに乗り込むのではなく、警備員室で会社の構造を知る警備員に聞き込みを行う。また、不正をしている相手に対面すると「やっぱりやっているんですか? カルテル」とカマをかけたり、立ち入り検査が許可されていないのに相手を動揺させるため後輩に「許可されたんですね!」と大声で言わせたりと、やりたい放題だ。正攻法ではないその捜査は、『HERO』(フジテレビ系)で木村拓哉が演じた久利生検事を連想させる。または田村正和が演じた『警部補・古畑任三郎』(フジテレビ系)のような……。坂口健太郎はこれまでも警察官や弁護士という職業を演じてきたが、30代に入った今、大人の貫禄が出てきていて、これまでのような青年のこじらせではない迫力があり、新たなステージに入ったことを感じさせた。

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